食を通して、東北を知るきっかけにしてほしい。そうした願いを込めて、京都で毎月11日に営業しているのが「きっかけ食堂」だ。魚介類や野菜、地酒などの食材を被災地の生産者から仕入れ、東北の食を提供することで、東北に思いを馳せ、さらに現地の人たちとのつながりを生み出そうという試みだ。

仮設住宅の集会所にエプロン姿の女性たちが集まり、楽しく会話しながら一緒に料理を楽しんでいる。中には慣れない手つきで、悪戦苦闘している様子の男性の姿も。完成した料理に、参加者の笑顔が一気に弾けた。公益財団法人味の素ファンデーション(以下、味の素ファンデーション)が調理台や食材などを提供して開催している料理教室の一コマだ。

愛さんさんグループを率いる小尾勝吉さんが東北復興にかかわり始めたのは、石巻みなと小学校近辺にボランティアとして派遣されたことがきっかけだった。仮設住宅に住む人に挨拶をしても、さっと家の中に引っ込んでしまう人が少なくなかった様子を見て、被災した人たちが外に足を踏み出すきっかけをつくりたいと考えた。


東北のほとんどの地域では、日常生活の中で車は欠かせない移動手段だ。各家庭に1台あるのは当然のこと、家族それぞれが自分の車を持っていることも多い。東日本大震災で大きな被害を受けた際、一切の家財道具を失った人が最初に買い戻したいと思ったものの1つが車だった。


「◯◯」には、参加者一人ひとりの「釜石で◯◯をやってみたい」という願望や思いを当てはめる。そんな意味を込めた。会議では参加者それぞれが釜石で実現させたいことを発表し合い、それに共感した人たちでチームを結成。

震災と原発事故から7年半が過ぎ、かつて避難指示が発令された福島県沿岸部の地域の中には、避難指示が解除され、徐々に住民の帰還が進んでいる場所もある。だが、仮に故郷に戻れても生活再建への道のりは多難だ。

漁に使う巨大なロープや金具、タコを捕まえるカゴ。約8mの高さまで積み上げられた、魚を入れる発泡スチロール製の魚箱。重さ100Kgを超える四角い氷の塊。見たことのない光景に、子どもたちが目を丸くする。

太陽の光が差すコットン農園に、言葉を交わしながら農作業する人たちの笑い声があふれる。優しい茶色を帯びたコットンは、「備中茶綿」という珍しい日本在来種だ。NPO法人ザ・ピープル(いわき市)は、いわき市内の農家や有志に呼びかけ、2012年4月から有機農法でのコットン栽培を始めた。環境に配慮した方法でのコットンの栽培を通して、人々の交流の場をつくることを目的にした取り組みだ。

巨大な濁流が建物を次々となぎ倒し、そこにあったはずの町が跡形もなく飲み込まれていく。震災発生当日の2011年3月11日に、大船渡市で撮影された映像だ。JR大船渡駅前にある大船渡市防災観光交流センターでは、当時の被災の様子を伝えるこうした貴重な映像や写真が今も展示され、津波の恐怖や防災の重要性を後世につなごうとしている。

一帯が色鮮やかな緑色に光り輝く農園で、手足が不自由な障害者たちが黙々と苗を植えたり、懸命に収穫作業を行っている。震災後に発足した遠野まごころネットが、同県大槌町と釜石市、遠野市に切り拓いた農園の風景だ。