第6弾 誰もがまちづくりの“主役”になれる。地域の魅力語り合う「釜石◯◯会議」(後編)

東日本大震災の被災地では、震災前から地域が抱える問題が、震災によってさらに目立ってきています。震災をきっかけに、様々な団体がこうした問題の解決に向けて取り組んでいます。本連載では、地域の抱える問題を解決するため、大きな貢献をされている個人や団体の活動を全20回にわたって紹介します。


「行動する市民を増やす」をコンセプトに、多様な世代や立場の市民たちがそれぞれ地域の魅力や実現させたいことを語り合う「釜石◯◯(まるまる)会議」。岩手県釜石市を舞台にした市民主導の取り組みは、町に活気をもたらし、多くの市民に主体性や参画意識を芽生えさせている。

学生や女性の参加増える。中学生が壁新聞で紹介

毎年300人ほどが参加する◯◯会議だが、それでもまだ学生や女性の参加率に物足りなさを感じていた。また、毎年4回ほど開催していた会議に「途中からだと参加しづらい」といった意見があることもわかってきた。そのため、3年目となる2017年度は、どの回からでも気軽に参加できるようにプログラム内容を変更するなど、参加へのハードルを下げる工夫を凝らした。


具体的には、これまで1期で完結させていたプログラムを前・後半の2期に分けて構成。1期あたりの開催数を3回に減らし、1日あたりの会議時間も短縮した。育児中の主婦をはじめ、長時間の会議に参加するのが難しい人も多いからだ。同時に、会場には毎回、子どもを預けられる無料の託児サービスや、喫茶コーナーも設けるようにした。プログラムそのものの内容も、どの回からでも参加しやすいように参加者同士の交流をメインにした構成を意識したという。


その結果、2017年度は2期合わせて280人が参加し、10のチームが生まれた。総数こそ以前とさほど変わらないものの、夏休み期間と重なった時期は初参加を中心に大学生が20人ほどに上ったほか、小・中学生や託児サービスの利用者も少なくなかった。実際、それまで3割前後を行き来していた女性の割合は4割前後に、回によっては5割近くに達するときもあったという。さらに、市在住の外国人や市外からの参加者もそれぞれ10人以上いた。柏﨑さんは、「参加してくれる人たちの層が変わってきて、新たな可能性を感じ始めている」と笑顔で語る。


「私にとって最大のモチベーションは、子どもたちが『楽しかった』『また行きたい』と言ってくれること。」そう話す柏﨑さんにとって、嬉しい出来事があった。2017年度の◯◯会議に参加した中学生が、「郷土の宝」をテーマに壁新聞を制作する学校の授業の一環で、◯◯会議のことを紹介したのだ。新聞の記事には、「釜石には何もないのではなく、知っているつもりでも見ないでいることが多い」といった記述がある。まちづくりを担う将来世代が、釜石の魅力を再発見し、行動する。◯◯会議が、そのきっかけになった瞬間の1つだ。


第3期の◯◯会議に参加したメンバーたち。この一体感が活動の源泉だ。

第3期の◯◯会議に参加したメンバーたち。この一体感が活動の源泉だ。

運営体制も刷新。市民と行政の二人三脚

同時に、この時期から運営体制にも変化が見られた。それまでの運営は、経済同友会を通じて派遣されていた東京などの民間企業出身者が主に担っていた。しかし、次第に彼らも元の職場に戻っていく。そうした中で、地元主導の運営の真価が問われる局面を迎えていたのだ。


柏﨑さんは、「復興が進むにつれて、外から復興支援に来てくれた人たちが徐々にいなくなり、それと同時に終わってしまう活動が多かった。◯◯会議は参加者の満足度も高かったし、そういう風に終わらせたくなかった」と当時を振り返る。


柏﨑さんら市民と行政が議論を交わした結果、生まれたのが現在の体制だ。実行委員の中から全体の企画・運営に携わる幹事3人を設置し、彼らが中心となってこれまで以上に関与する仕組みをつくった。それを事務局の行政が支える、二人三脚の体制だ。幹事の1人である吉野和也さん(「大槌食べる通信」編集長)は、「行政と市民が手を組み、“一緒に作っていく”という信頼関係をつくることは重要だ」とし、こうした関係性が◯◯会議の成果につながっていると指摘する。


行政側も、「例えば定例の実行委員会では委員のメンバーたちが自由に発想や考えを言い合える”柔らかい雰囲気”をつくることを大切にしてきた」(山口さん)という。実際、メンバーはその雰囲気を感じとっているようで、幹事の常陸奈緒子さん(釜石リージョナルコーディネーター)は「枠組みとしては市の事業だが、企画や運営の権限などは大部分を委ねてもらっている。自分たちで考えたことを実現しやすい環境は、達成感につながりモチベーションになっている」と話す。


定期的に実行委員会を開催し、メンバー間で情報を共有している。

定期的に実行委員会を開催し、メンバー間で情報を共有している。

そのうえで、常陸さんはこう続ける。「発足当初は“復興”の意味合いが強く、参加者も普段からまちづくりに関わる人が多く、チームも地域課題解決型の活動が目立った。ただ、特に昨年度からは復興・まちづくりの文脈はありつつも、純粋に“釜石を楽しもう”という空気感に変化してきている。」


そんな◯◯会議は、2018年度も継続開催を予定しており、2019年1月、2月に第5期を実施する計画だ。また今年度は、これまでの活動内容をまとめた冊子の制作のほか、第1期から第4期の○○会議で生まれたチームの活動紹介・体験会「まるフェス」を11月24日に開催する。


冊子は、◯◯会議の存在が「一目でわかる」(山口さん)ような内容に仕上げ、より多くの市民に活動の意義や魅力を知ってもらうのが目的だ。一方の「まるフェス」は、来場者に市内で活動する団体の存在を知ってもらうとともに、○○会議によって生まれたチーム同士の交流を促し、さらに活動を活性化させるのが狙いだ。互いに刺激し合い、釜石の魅力を磨く新たな発想や相乗効果が生まれることを期待しているという。


左から吉野さん、柏﨑さん、常陸さん、山口さん。

左から吉野さん、柏﨑さん、常陸さん、山口さん。

<成果を出すためのポイント>

  • ・世代、性別、国籍などの立場を超えて”平等”に発言機会を与え、あらゆる意見を尊重する
  • ・学生や女性も途中からの参加ができるよう、プログラムや受け入れ態勢などを工夫する
  • ・市民主導を行政が支える”二人三脚”の体制をつくる
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