Fw:東北Weekly[特別編]「関係人口×◯◯で考える三陸の未来」〜復興を通じて生まれた関わりあいを深めるには〜

「新しい東北」官民連携推進協議会は、福島県、宮城県、岩手県の各県ごとに、「官」と「民」から構成される意見交換会を実施し、Fw:東北Weekly[特別編]を企画しました。岩手県での意見交換会は、株式会社岩手銀行、岩手県、国立大学法人岩手大学、特定非営利活動法人いわて連携復興センター、復興庁、復興庁岩手復興局が参加し、官民の協力で取り組む課題を議論し、ワークショップを企画しました。そして、2018年12月17日(月)に、岩手県でのFw:東北Weekly[特別編]として、イーストピアみやこ(岩手県宮古市)にて、「『関係人口×◯◯で考える三陸の未来』〜復興を通じて生まれた関わりあいを深めるには〜」を開催しました。本ワークショップは、12月16日(日)・17日(月)に開催された「いわて三陸復興フォーラム」(岩手県、いわて未来づくり機構主催)の、沿岸報告会の一部として行いました。今回は、この様子を紹介します。


橘慶一郎復興副大臣の開会のあいさつに引き続き、「新しい東北」と官民連携推進協議会についての説明、Fw:東北の活動紹介が行われました。

続いて、事務局より開催の主旨として以下のような説明がありました。

「様々な大型イベントが控える今、この『関係人口』をそれぞれの関わりの中でどのように解釈し、つながりを生み出す仕掛けをしていくべきなのか。また、参加者が今後岩手県三陸地域にどのように関わることができるのか、複数の切り口を紹介しながら、共に考える機会とします。」


インプットトークとして、ブースセッションの登壇者による自己紹介が行われました。

・株式会社かまいしDMC 取締役事業部長 河東英宜氏
観光促進会社を立上げるとともに、地域商社も併設しました。二つのドメインを持つことで不足する経営資源を補いあっています。釜石という人口減少地域の中でどう観光資源を生かしつつ関係人口を増やしていくかということが本日のテーマと考えています。

・やまだワンダフル体験ビューロー 体験観光コーディネーター 服部真理氏
岩手県山田町の復興コーディネーターに就任しました。人口減少が進む中、関係人口を増やすための策を模索し、2016年から、「やまだワンダフル体験ビューロー」を立上げ、観光客の受入体制づくり、観光客誘致、PR活動等、町の総合窓口として、着地型の体験観光のコーディネーターとして活動しています。課題も多く、まだまだ発展途上です。

・特定非営利活動法人遠野まごころネット理事 多田一彦氏
遠野市のボランティア受入団体として活動しています。様々な能力を持つ方が集りますが、単に受入れて何かして頂くだけでは関係人口とならないと考えています。お互いの能力や課題を知ることが重要と考えています。これにより初めて関係人口となり、行ったり来たりする交流が生まれます。このような活動が現在の活動にもつながっています。今日はそうした話をしていければと考えています。

・宮古土木センター職員
長野県から岩手県への応援派遣職員として宮古市で働いています。仕事のつながりだけでなく、地元の方々との交流や応援派遣職員どうしの交流など、派遣が終了し長野に帰った同僚による人のネットワークなどの話題を提供したいと思います。


次にテーマごとに2つずつのテーブルに分かれブースセッションを行いました。
■テーマ 1「関係人口×観光」

1つ目のテーブルは河東英宜氏、2つ目のテーブルは服部真理氏を中心にディスカッションを行いました。

服部氏からは、「新たな試みを始めるために、地域内の様々な人との関係性を構築しました。その上で、農業や漁業といった生業を観光資源化しました。周辺自治体との連携や、紙媒体とSNSを共に活用し情報発信した結果、現在ではかなり閲覧数が増えました。」と話していただきました。

■テーマ 2「関係人口×インターン・震災後のボランテイア・自治体応援派遣職員など (特定の期間に役割を持って地域に関わりを持った人々)」

1つ目のテーブルは多田一彦氏、2つ目のテーブルは長野県から応援派遣職員として岩手県沿岸広域振興局土木部宮古土木センターに来られている主査の小柳徳光氏、技師の達家将之氏を中心に、ディスカッションを行いました。

多田氏からは、「海外へは情報発信が大事です。まずは来てもらうこと、次に単に来てもらっただけでは関係人口とならないので、人々が持っている資源やリソースを生かし、復興に役立てることです。これを持続した関係人口とするためには、人と人、人と地域、地域と地域、それぞれにある意味で独立した関係性を構築しなければ継続できません。同じ課題に取り組むこともその一つなので、課題解決や交流の場が必要と考え、外国企業などの支援も受けて、交流の場所・郷作り等の活動を推進しました。」というエピソードが話されました。地域の魅力・人と人とのつながりを引き出す事が大事なのでは、と締めくくられました。


ブースセッションの後、登壇者によるパネルディスカッションを行いました。

以下の問いかけに対し、各登壇者からそれぞれの考えを述べられました。

① 他地域の人が関わることで、どんなことが起こりそうか?その時の関わり方は?

② 他地域の方との関わりを更に広げたり、続けたりすることで得られそうなメリットは?

③ 他地域の方との関わりを更に広げたり、続けたりするために必要なアクションは?

④ その他、活動についての感想やメッセージなど

・河東英宜氏

首都圏で特徴のある仕事をする方々は地元に緊張感を醸し出します。人々が集まりやすいイベントが必要と考え、それをSNSで呼びかけ、来た人は気に入ってくれます。釜石は昔から産業構造上、出入りが多いが交流人口は少ない。2019年はラグビーワールドカップがある。外国人・インバウンド・観光者が来る機会をアクションにつなげるようにしたい。

・服部真理氏

観光事業として第1次産業の方と消費者を結ぶ漁師クルーズなどの体験ツアーを企画しました。漁師の暮らしが見えると、作っている牡蠣が見え、その先に首都圏で山田産(岩手県山田町)の牡蠣を買う行動につながります。事業者や町の人々へのサポートは必要で、人と人をつなげるコーディネートは気遣いが必要です。これからも、もっと町の人々と信頼関係を結び、町民と町に訪れてくれる人々を笑顔にしたい。

・多田一彦氏

事業を続ける秘訣は他の地域の方に言ってもらうことで、地域住民や家族も聞く耳を持ちやすくなり、新鮮な気づきがあります。他の地域の方は得意な分野があると入りやすく、親しくなると強固な関係性が結べます。これからも来訪者と地元の人が親しくなれるような場づくりを継続していきたい。

・宮古土木センター 応援派遣職員

岩手で働き、出会う人と関わり、他の仕事で岩手に来ている方々と関わり、地元に帰っても長野で周りの方々に話すなど、関係人口の方々と交流を持ち続けたい。知人も無い中、表に出るように心掛け、他の応援派遣職員や岩手の友人らと会うのが楽しみ。長野県からの応援派遣職員は、平成24年以降で、延べ約130人となっています。長野に帰っても応援派遣仲間で飲み会をしたり、岩手にまた訪れたりする職員も多いと聞いています。任期が終わっても職員同士でネットワークを活用することも重要で、他自治体、他地域との交流も必要と感じています。

会場の参加者からは以下のような意見が寄せられました。

地元学生:復興に携わっている方や地域で働く方々の話を聞き、これからも震災を忘れず地域のことを考えていきたいと思います。勉強を就活につなげ、地元を大切に生活していきたい。今日は仕事を通した貴重な話が聞けて有意義でした。

一般参加者:関係人口とは、地元に愛着を持ち、好きになることが重要と感じました。岩手を少しずつ好きになってきました。今後も岩手を巡り、家族や友人にも話したい。


最後に、復興庁参事官 寺本氏より閉会の挨拶がありました。


参加者や登壇者からは、以下のような感想を聞くことができました。
<参加者>
■NPO法人職員

三陸はリソースが足りない地区があり、補完し合うような地区間の連携が必要だと感じました。田野畑村(岩手県)以外の所も好きになっていただき、例えば宿泊施設がない町と近隣の市町村で連携し、地域一帯で関係人口呼び込むことが必要と感じました。

■学生

今日は仲間4人で参加しました。震災時は小学5~6年生でした。参加し、「関係人口」という言葉を勉強して、復興の現場で活動しているNPOの方や応援派遣職員の仕事も聞け、働く姿を実感できる機会となりました。震災から得た知識を活用し、大学を卒業した後も岩手県に貢献したい。

<登壇者>
■やまだワンダフル体験ビューロー 体験観光コーディネーター・服部真理氏

今日は、岩手県山田町の復興コーディネーターとして感じている課題を提供しました。山田町の人も知らなかったことを遠野の方から教えていただき、またロケ地活用案など参加者から色々意見をいただき、とても参考になりました。私が願う三陸の未来は、三陸がたくさんの人々にとって、常に旅行の目的地の選択肢となることです。また、山田町のオランダ島は、三陸では珍しいエメラルドグリーンの海に囲まれ、白浜で海水浴が楽しめる島で、現在、漁船クルーズで行くことができます。近い将来、遊歩道やトイレが整備されるので、※グランピングなどが楽しめる島になるとよいなと思っています。
※グランピングとは
「グラマラス(Glamorous)」と「キャンピング(Camping)」を掛け合わせた造語で、ホテル並みの設備やサービスを利用しながら、自然の中で快適に過ごすキャンプのこと。

■特定非営利活動法人遠野まごころネット 理事・多田一彦氏

他の地域の方は得意な分野があると入りやすく、親しくなると強い関係性が結べます。これからも関係人口を増やすような場づくりを継続していきたい。

<意見交換会メンバー>
■特定非営利活動法人いわて連携復興センター・瀬川加織氏

岩手県での意見交換会での意見により、今回の企画が開催されました。セクターを超えた方々の生の意見が聞け、個々の方向性が皆同じであることも確認できました。今後も、いわて連携復興センターとして、県単位の「官」「民」で意見交換会を実施し考える機会づくりを通し関係人口について議論していきたい。

復興庁参事官 寺本耕一氏は、「岩手県外の参加者や学生の方々にも参加してもらえたのはよかった。それぞれの活躍の場で本日聞いた情報や内容を話題としていただけたらと思います。登壇いただいた方のお話から、関係人口について、深く考える場ができたのは意味のある企画であった。」と、開催後に述べられました。


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