Fw:東北Weekly[特別編]「ふくしまキャリア探求ゼミ~ふくしま新しい働き方・チャレンジの仕方について知ろう」を開催

「新しい東北」官民連携推進協議会は、福島県、宮城県、岩手県の各県ごとに、「官」と「民」から構成される意見交換会を実施し、Fw:東北Weekly[特別編]を企画しました。福島県での意見交換会は、株式会社東邦銀行、公益財団法人福島県観光物産交流協会、福島県、国立大学法人福島大学、一般社団法人ふくしま連携復興センター、復興庁、復興庁福島復興局が参加し、官民の協力で取り組む課題を議論し、ワークショップを企画しました。そして、2018年12月2日(日)に、福島県でのFw:東北Weekly[特別編]として、コラッセふくしま(福島県福島市)にて、「ふくしまキャリア探求ゼミ~ふくしま新しい働き方・チャレンジの仕方について知ろう」を開催することになりました。今回は、この様子を紹介します。

復興庁参事官寺本氏の開会のあいさつに引き続き、「新しい東北」と官民連携推進協議会についての説明、Fw:東北の活動紹介が行われました。

続いて、本日のテーマについて事務局より以下のような説明がありました。

「福島県では震災以降、県内での就職やUターン・Iターンで移住を希望する人が増えています。また、県内で 活動する地域おこし協力隊の隊員数が100名を超え、福島県で新たな生活や活動にチャレンジする機運が生まれています。実際にチャレンジし生活するためには、どのような要素が必要でしょうか。今回のイベントでは、福島県にUターン・Iターンで移住して仕事や生活において新たなスタイルを確立している方をゲストに迎え、これまでどのようなキャリアを歩んできたのか、今後の自分や地域についてどのように考えているのかのお話を伺う場を設けました。ゲストを囲んでざっくばらんに質問し、経験や考えをゲストから教えていただきながら、参加者それぞれの福島県での未来(仕事・生活)についてイメージしていただきたい。そして自分にもこんな生き方、働き方があるかもしれないという発見をしていただきたい。ぜひ、参加者ご自身でアクションのきっかけとなるものを持ち帰ってください。」


移住または事業承継で新たなチャレンジをしながら、ビジネスモデルを確立し、福島県で働くことを考えている人や福島県への移住を考えている人のロールモデルとなる以下の6名の方々をゲストとしてお迎えしました。

・株式会社道の駅ひらた駅長 高野 哲也氏(福島県平田村・50代・小売業・Iターン)
埼玉県出身。1994年、平田村にIターン。1996年「あぶくま ローズ KOHNO NURSERY」創業。2009年「道の駅ひらた」の駅長に就任し、地元食材を使った商品の開発・販売を行う。

・NPO法人ワンダーグラウンド 榊 裕美氏(福島県いわき市・20代・漁業・Iターン)
青森県出身。2017年、NPO法人ワンダーグラウンドに就職し、いわき市久之浜で“漁師修行”をしながら、漁業体験イベントの開催や漁師の取材をした図鑑の作成を行う。

・NPO法人あぶくまエヌエスネット 代表理事 進士 徹氏(福島県鮫川村・60代・自然体験・Iターン)
東京都出身。1988年に鮫川村に移住し、あぶくまエヌエスネットを創設。「土、自然から学び共に生きよう」をテーマに、子どもから大人まで四季折々、山村での体験講座を持ちながら、グリーンツーリズムや生涯体験交流学習の場づくりを行う。

・株式会社デザイニウム 取締役/ディレクター 西本 浩幸氏(福島県会津若松市・30代・IT・Iターン)
愛知県出身。10年間SEを経験したあと、ITと地域課題解決の可能性を求めて会津若松市へ移住。CODE for AIZUやCoderDojo Aizuなど、ITで地域課題を解決するコミュニティで活動している。

・田村夏井新聞店 代表 古崎 泰介氏(福島県小野町・30代・まちづくり・Iターン)
埼玉県出身。一般企業で勤務した後、2014年に地域おこし協力隊として小野町に移住。 任期満了後は、高齢のため継続が困難であった地元新聞店から事業を引き継ぎ、小野町で活動を続けている。

・古山果樹園 5代目 古山 浩司氏(福島県福島市・40代・農業・Uターン)
福島市出身。創業明治16年の古山果樹園を営む家庭に生まれ、大手企業で13年間サラ リーマンとして勤務した後、2010年に就農。見た目を良くするための栽培方法ではなく、味を重視する栽培方法で、味にこだわった桃とりんごを提供している。


事務局からの本日のテーマについての説明に続いて、6名のゲストから簡単な自己紹介がありました。参加者はゲストの自己紹介を聞いた後、詳しく話を聞きたいゲストを2名選び、ゲストを囲むかたちで車座になり交流を図りました。この「車座トーク」では、ゲストが生まれてから今までの人生の気持ちの上がり下がりを図にした「モチベーショングラフ」を作成し、それをもとに人生の紆余曲折を参加者に語りながら、参加者からの質問に答える形で進行しました。ゲストの様々な経験をざっくばらんに聞くことができ、参加者から多くの質問が飛び出すなど、活発な場となりました。


最後に、福島県企画調整部政策監林氏より閉会の挨拶があり、ワークショップは終了しました。


当日は、福島県内での就職やチャレンジを考えている10代、20代の方々も参加しており、今回はゲストと参加者との交流を通じて、福島県での働き方やチャレンジの仕方をイメージする場となりました。

参加者やゲストからは、以下のような感想を聞くことができました。
<参加者>
■社会人(Iターン)

もとはIT企業で仕事をしていたが、仕事のマンネリ化やルーチンワークに疑問を感じていた時に、東日本大震災が起きました。3年前、仕事を辞めて復興支援の仕事がしたくて、田村市(福島県)の復興支援員として東京から移住しました。今は観光情報発信・生活情報提供といったことに取り組んでいます。今日は自立して仕事をする上で、他の人の話を参考にしたくて参加しました。これまで縁もゆかりもなかった田村市で仕事をして、地域の方々に良くていただいた恩返しにと福島県で仕事を続けています。支援するつもりで来ましたが、応援していただいた感があります。東京では団地に住んでいましたが、こちらに来て、地域との密着度合いは雲泥の差だと感じています。地域に入るということを実感しています。

今日は移住者としての成功体験を直接聞くことが出来て、自分自身のモチベーションが上がりました。共感することも多くありました。お二人(進士氏・西本氏)のお話の中で、「何があっても苦労と思わない、いちいちくじけていられない、課題は人生の宿題」というポジティブ思考に共感を覚えました。

■高校生

地元の須賀川の商店街を活性化したいので、県内で活動している人の話を知りたかった。
原発事故があって福島はマイナスイメージが強かったけれど、逆にやる気のある人が今福島に集まってきていると思いました。なんでも始められる土壌、チャレンジできる場所なんだと思いました。(高野さん、古崎さんの)お話の中で、「何回も失敗してもよい、自分が何ができるかが大切」という言葉が心に響きました。今日は、県内で活動している方の具体的な活動やプライベートなお話を聞くことができて良かった。

■大学生

フィールドワークで大学1年生の時に川内村(福島県)に入りました。その後も川内村のことが気になっていました。川内村は知名度も低い。このことをどうにかできないか、その手掛かりを考えるきっかけを見つけたくて参加しました。今は川内村のそば粉を使ってキッチンカーを走らせることを計画しています。Iターン方々の話を聞いて、東京と違って「福島だからやりたいことが自由にできる」と思いました。新しいことを始めて、充実した仕事をしているという話を聞いて、自分のなりたい姿も見えてきました。

<ゲスト>
■古山果樹園・古山浩司氏

農業の普及をしたいと思っていましたので、参加者が学生と聞いて学生に農業の魅力を伝える機会になると思って参加しました。昔は、兼業農家だったし、次男だったので将来はアパート経営でもしてと考えていたこともあり、農業従事者になるとは思っていませんでした。福島で農業をやることに決めた理由は、福島を愛しているから。愛の象徴である桃を両親が作っていてくれたということもあります。もともと美味しい桃を作っていました。農業をやることに決めたとき、本気で農業をやりたいと思い専業農家になりました。その後、東日本大震災が起きました。このことが覚悟を堅固にするきっかけになりました。

なかなか自分自身の半生について話すことがないので、良い経験になりました。

■NPO法人ワンダーグラウンド・榊裕美氏

お声がけいただき、自分の話がお役に立つのであればと参加しました。個人的に自分の話を聞きに来る人はいたけれど、このような形で公の場で話すのは初めての経験でした。福島で働くということには、そんなにこだわりはありません。たまたま声がかかり、そこで自分で何かやることがあるから、いわきにいる。どこでも「自分がやりたいこと」が仕事にできればと考えています。最初に就職した仕事と今の仕事の違いは、自分で自分の仕事を切り開いている実感、やりがいを感じられることです。改めて自分の人生を振り返ってみて、これからどんなことがあってもやっていけると思いました。今までやってきたことが愛おしいと思いました。

<意見交換会メンバー>
■福島大学教授・初澤敏生氏

子どもの支援や企業の支援はありますが、若者への支援が抜け落ちていると思っています。それは、就職の問題にも関係すると思います。また、地域おこし協力隊が定着しないことも課題と思っています。福島大学の求人内容を分析してみると東京と福島の給料の差は15%もあります。この状況からみると東京へ就職することになるのは致し方ないと思います。

一方で、Iターンであえて福島に来て仕事をしている人がいます。なぜ、福島に来るのか?そいう話を学生たちに聞いてもらいたいと思い、今日の企画を考えました。ゲストの話を聞いていただき、福島で働くというヒントを聞いてもらいたい。また、成功談だけじゃなく、苦労されたことや地域の課題も話していただくなど、マイナスの話もお話いただき、ありのままの姿を伝えていただけたことは良かった。若いスピーカーが少なかったことは、決してマイナスではなく、長く活動された方の話の中に価値あるお話や続けていくためのヒント、地域に根付いてきた人の話の中に学ぶことがありました。若い世代と長く活動された世代、両方の話を聞けたらと思って企画しました。

大手企業とは違う、規模は小さくても動いている人々の話を聞ける良い機会でした。
いずれにしても、パワーのある人たちの話でした。今後は、大学のキャリア担当の関係者にも協力してもらい、参加者を増やすことができればと思います。


復興庁参事官 寺本 耕一氏は、「まずは、参加者の皆様にとって、福島で働くイメージを持ってもらえたのではと思います。また、このような機会により新たな横のつながりを作ることとなれば思う。復興・創生期間も残り2年余り。この福島の意見交換会が復興・創生期間後も続く官民連携の一つのベースをつくることになればと思っている。」と、開催後に述べられました。


参加者もゲストも、福島という場所が東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所の事故を経て、新たなチャレンジの場所となる可能性を持っていることを感じた一日となったのではないでしょうか。

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