第3弾 集会所の可能性によって生み出される地域のつながり(特定非営利活動法人つながりデザインセンター・あすと長町)


宮城県仙台市あすと長町地区に拠点を置く「つながりデザインセンター・あすと長町(愛称・つなセン)」は、地域のコミュニティ形成を推進する組織だ。地域住民同士のつながりを活性化し、共助の仕組みをつくるためのヒントは、地域の集会所にあった。


地域のつながりを広げる多種多様なイベント提供

「つながりデザインセンター・あすと長町(以下・つなセン)」は、あすと長町地区の災害公営住宅における、コミュニティ形成支援のために発足した組織だ。災害公営住宅とは、災害により住居を自身で確保することが難しい家庭に対して、仮設住宅の次のステップとして地方公共団体が提供する集合住宅。あすと長町には現在3カ所の災害公営住宅が存在しており、その大きな課題が住民の“孤立化”である。


「災害公営住宅は、さまざまなエリアから見知らぬ人同士が入居してくるため、当初から住民間のトラブルや高齢者の孤独などが懸念されていました」と入居当時の様子を語るのは、つなセンの副代表・新井信幸氏だ。



「住居を失い、今まで構築してきた近所付き合いやライフスタイルががらりと変わることによって新しい環境になじめず、自宅に閉じこもりがちになり、果ては孤独死してしまう人もいます。そういった問題は、住民同士で支え合い、お互いに不安を軽減させることで解決できる可能性が高いんです」と新井氏。


被災直後の仮設住宅では、支援活動として自治体やボランティア団体が毎日のようにイベントを開催していた。そのため住民同士のコミュニケーションも活発で、皆の表情も明るかったという。しかし、災害公営住宅に移行後、自治体やボランティアの介入が無くなったことで顔を合わせる機会が減り、孤立する住民が増えてしまった。その様子を見ていた新井氏は、コミュニティ維持支援の必要性を実感した。


「自宅以外の安心できる“居場所”が必要だと考えました。そこで、誰でも気軽に入れて、周囲とコミュニケーションが取れる場所として、あまり使われていなかった災害公営住宅内の集会所を、機能させることから活動を始めました」(新井氏)


しかし、住民だけで集会所の運営をしようとすると、どうしても誰か一人に負担が偏ってしまったり、参加する人が固定化されてしまったりと、コミュニティ活動の維持が難しい現実があった。


「そこで考えたのが、集会所における外部組織によるイベントや情報発信の提供でした。外部の組織によって多種多様なイベントを提供することで、毎回異なる顔ぶれが参加してくれるようになり、地域のつながりが広がっていく。無理に住民の方だけで自治を頑張らなくて良いんです」と、新井氏は語る。


さまざまなボランティア団体が交代で料理を担当し、コミュニケーションの場として提供する「あすと食堂」も、集会所で行われるつなセンの活動の一つだ。そこでは、子どもから高齢者までが仲良く一緒に食事をとっている。この様子は、つなセンの提供するコミュニティ活動を通して生み出される地域のつながりが住民たちの共助を促し、風通しのよい暮らしやすい町への成長の足がかりとなっていることを教えてくれる。


特定非営利活動法人つながりデザインセンター・あすと長町(宮城県仙台市)
http://www.tsuna-cen.com/