<2日目>
「染織工房れんが」で会津型を学ぶ
会津2日目の朝、目を覚まして外に出ると、辺りは一面銀世界。夜の間にかなり降ったのでしょう、昨日よりも数センチ雪が深くなっていました。手袋を買いに行く子ぎつねの姿が目に浮かぶよう。東京に住んでいると中々見られない風景に胸が躍ります。
ひとしきり雪と戯れた後は、健康的な朝ごはんを食べてまさえさんとのんびりお喋り。実家のようにごろごろしてしまいましたが、そろそろ出発の時間。名残惜しさを感じつつ、若草物語を後にしました。
また来たいな、と思える宿でした
まずは昨夜斉藤さんに「行きますね!」と約束した「染織工房れんが」へ。古い蔵を活用した、雰囲気のある建物です。
伝統的な蔵が軒を連ねる喜多方は、「蔵の町」としても有名です
1階にはストールやノート、カレンダーなどが展示販売されていました
2階は織りの教室です。この隠れ家のような雰囲気がたまらない!
織りかけの織物に光が当り、美しい表情を見せていました
ぐるりと工房を見学し終えると、斉藤さんが工房の店主・冠木昭子さんを紹介してくれました。冠木さんは女子美術大学で染織を学んだ後、ご主人の出身地である喜多方で暮らしはじめ、会津型の復興に取り組んできたといいます。
会津型研究会の会長も務める冠木(かぶき)さん
冠木さん 型を使って柄を染める染色技法を型染といいます。喜多方は伊勢白子・京都・江戸と並ぶ染型紙の生産地で、その型は会津型と呼ばれ親しまれてきました。時代の変化と共に忘れられていきましたが、江戸時代から型紙の製作販売をしていた小野寺家の蔵から、1982年に3万を超える型紙が出てきたんです。そこで私たちはこの型を新たに彫り直し、現代に蘇らせる活動をしています。
工房内には会津型やその型で藍染めたハンカチが展示されていました
見せていただいた型紙の模様は、「こんなに細かい柄をどうやって彫るんだろう?」という繊細なものばかり。素朴で温もりがありながらも美しく、いま見てもとってもお洒落です。
今回は時間がなかったので見学だけでしたが、染織工房れんがでは型彫りに色刷り、絞り染めにはた織りなどさまざまな体験ができるとのこと。次はぜひ、体験させていただこうと思います。
古民家カフェ「つきとおひさま」でランチ
喜多方でお昼と言ったら、やっぱり喜多方ラーメン! ……と言いたいところですが、喜多方ラーメンは何度も食べているし、今回は新しい会津に出会う旅ということで、「食堂つきとおひさま」を訪問しました。元々は豆腐屋さんの製造所兼住居として使われていた古民家を改装したカフェです。
店主の五十嵐加奈子さんは喜多方の隣の北塩原村生まれですが、ずっと東京で飲食の仕事をしていたそう。いつか自分のお店を持つのが夢だったものの、地元にはあまり関心がなかったといいます。しかし、ご主人が喜多方の街並を気に入ったことがきっかけでUターンを決意。2012年にお店を開きました。
旬のおかず定食(1,000円)
フレンチトースト(650円)
五十嵐さんの実家で育てている野菜や、地元の野菜をたっぷり使った健康的で美味しいお料理。器もお洒落で、眼福&口福の極み!
カフェの隣は雑貨店になっていて、リネンの服に木の器など、五十嵐さんがセレクトした暮らしの道具が置かれていました。起き上がり小法師に福島おもしろカルタといった福島にゆかりのある雑貨も。お洒落なお土産を購入したいときは、ぜひ立ち寄ってくださいね。
「新宮熊野神社」を参拝し、国の重要文化財「長床」を見る
続いて、食堂つきとおひさまから車で15分ほどの場所にある「新宮熊野神社」へ。ひっそりと静まった参道を進むと、荘重な拝殿が現れました。
手前の大イチョウは寿齢800年。こちらも見事な大樹です
この拝殿は「長床(ながとこ)」と呼ばれ、国の重要文化財に指定されています。賽銭箱の先には壁が無く吹き抜けの空間が広がっていて、何とも不思議な新鮮さでした。
正確な建立年はわかっていませんが平安時代末期から鎌倉時代初期に建てられたものと言われています。修理・復元を経ていまの形になりました
直径45cmの円柱44本が等間隔に5列に並んでいます
飛田 なんて言葉にしたらいいかわからないけど、いい空間ですね。眼を閉じて瞑想したくなるような、厳かで穏やかな気持ちになります。
谷津さん 秋になると紅葉も綺麗なんですよ。
飛田 あのイチョウが色づくんですね。その時期にまた来たいなぁ。
「IIE」で会津木綿のお土産を選ぶ
長床から10分ほど車を走らせ、阿賀川を越えると会津坂下町です。次は谷津さんが営む「IIE(イー)」の工房兼ショップを見学させてもらいましょう。
元々は幼稚園の園舎だった可愛らしい建物がIIEの事務所です
ショップには会津木綿を使った色とりどりのストールや雑貨が並んでいました
実は、IIEという名称には「311をひっくり返す」という意味が込められています。谷津さんは震災直後からボランティアを始め、会津に避難してきた方々と接していました。その中で、「毎日やることがない」「仕事がない」と話すのを聞いたことが、事業を立ち上げるきっかけになりました。
初期の頃は避難してきた女性だけでつくっていましたが、生産数の増加に伴い、地元の女性にも仕事を依頼するように。現在では約20人の方が製作に携わっています。
IIE代表の谷津さん
谷津さん きっかけは震災ですが、いまは会津木綿を現代の暮らしに取り入れやすい形で提案するブランドとして動いています。会津木綿製品がたくさん揃うお店として、気軽に遊びに来てもらえると嬉しいです。
初期の頃からつくり続けている製品、会津木綿のストール
会津木綿のあずま袋。20種類以上のバリエーションがあり、どれにしようか悩んでしまいます
贈られた人がハンカチとして使える会津木綿のご祝儀袋。ほかにはないアイデア商品です
なお、お店がある会津坂下町青木地区はかつて「会津青木木綿」の生産が盛んで、まるで"会津木綿村"の様だったといいます。IIEは会津青木木綿を再現するため、地域の廃工場から織機を譲り受け整備してきました。機械織りの技術は人から人へ口伝されていたため、資料はほとんど残っていなかったそう。以前織物工場で働いていた地域の人の協力を仰ぎながら、一年をかけて取り組み、昨年末ようやく再現に成功しました。
会津青木木綿を使った製品。本格販売はこれからです
工房も見せてもらったところ、古い織機がずらりと並んでいて圧巻の光景でした。一つひとつの織機は綺麗に磨かれているものの、使い込まれた風格と重厚感を漂わせています。長い年月を通して人に使われてきたものって、どうしてこんなに味があるのでしょう。古いものが好きな人、伝統産業に興味がある人はぜひ見学してみてください。
約100年前に開発され、大正時代に織元が購入したものと言われる豊田式鉄製小幅動力織機(Y型)。約30年前まで使われていたものを修理して使っています
「会津旨酒 五ノ井酒店」で会津の酒を購入
IIEを出て、同じ会津坂下町内にある「会津旨酒 五ノ井酒店」にやってきました。会津のお酒が豊富に揃うお店です。店長のお父さまが対応してくれました。
五ノ井さん 昔は会津坂下の酒と言ったら福島の中でも最低ランクで、軽視されていたんですよ。でも、若い杜氏が伝統に新しい息吹を加えたおかげで、全国に名前が知れ渡るようになりました。「飛露喜」や「天明」はもちろんのこと、いいお酒がたくさんあるんです。
たとえばこちらは、「会津中央乳業」の濃厚なヨーグルトと会津坂下産瑞穂黄金を合わせたヨーグルトリキュール「snowdrop」シリーズ。発売を開始したのは2011年6月です。震災後、会津の牛乳からは放射性物質が検出されませんでしたが、県内全ての牛乳に出荷制限が掛かったため、地元の酪農家や乳業メーカーは風評被害に苦しめられたそう。「snowdrop」も出鼻をくじかれましたが、現在では福島を代表するお酒のひとつとして親しまれています。
また、こちらの日本酒「央」は、五ノ井酒店が曙酒造に発注して造ったオリジナル商品。東京では中々手に入らないお酒だそうです。
このほかにも、五ノ井さんはさまざまなお酒を紹介してくれました。日本酒好きにはたまらないお店だと思います!
「会津乳業」で抜群に美味しいソフトクリームを食べる
最後の目的地は、五ノ井さんのお話にも出てきた会津中央乳業が運営する「べこの乳 アイス牧場」です。
「べこの乳」は、専用のタンクを使い85℃で15分間かけてゆっくり殺菌した牛乳です。こうすることで、生乳本来の風味とコクがそのまま残るのだとか。アイス牧場で食べられるのは、そんな「べこの乳」の搾り立ての風味が詰まったソフトクリーム。美味しくないわけがありません!
クリーミイなべこの乳ソフトクリーム
人気のコーヒー牛乳「べこの乳発 コーヒー特急」をそのままソフトクリームに。甘さ控えめです
ソフトクリームにはバニラを使っていないそう。妙な甘さがなく、生乳本来の味が感じられます。「コーヒー特急」もほろ苦くて大人の味わい。「ソフトクリームってこんなに美味しかったっけ?」と驚いてしまいました。これを食べるためだけに会津に行く価値がある、と言っても過言ではありません。
旅を振り返って
アイス牧場を出た後は、再び会津若松駅に戻り、レンタカーを返して17時12分発の電車に乗りました。
震災による直接的な被害は少なかったものの、原発事故による実害と、激しい風評被害にさらされた会津エリア。観光客は戻ってきていますが、震災前の水準にはまだ達していないようです。
でも、さすが福島を牽引する観光地域です。美しい風景や街並、美味しい郷土料理に伝統文化と見どころがたくさんあり、1泊2日では足りないな、と感じました。若草物語に一週間程滞在して、農業と手仕事に勤しみながらあちこち探検するのも楽しそうです。
ちなみに、ちょうどこの原稿を書き終えたとき、草春窯/工房爽から完成した器が届きました。しっとりと艶やかな白磁のスープボウル。しばらくはこの器でごはんを食べながら、再びまさえさんの手料理をいただく日を心待ちにしたいと思います。
< 会津1泊2日観光モデルプラン >
1日目
08:08 | 東京駅発(やまびこ127号)/郡山駅でJR磐越西線に乗り換え |
10:55 | 会津若松駅着、レンタカーを借りる |
11:30 | 「さざえ堂」見学 住所:会津若松市一箕町八幡滝沢155 電話:0242-22-3163 *拝観料:400円 |
12:30 | 「よしのや食堂」でソースカツ丼を味わう 住所:会津若松市東山町大字湯本字居平113 電話:0242-27-2371 *ソースカツ丼900円 |
14:00 | 「草春窯/工房爽」でろくろ体験 住所:大沼郡会津美里町瀬戸町甲3175 電話:0242-56-3732 *体験費2,500円 |
18:00 | 「農泊 若草物語」に宿泊 住所:喜多方市熊倉町熊倉字熊倉845 電話:0241-22-1835 *宿泊費6,000円 http://www.kitakata-gt.jp/farmers/detail.php?i=2 (2022年12月15日時点 アクセスできなくなっています。) |
2日目
11:00 | 「染織工房れんが」で会津型を学ぶ 住所:喜多方市1丁目4536 電話:0241-23-1424 |
12:00 | 「食堂つきとおひさま」で昼食 住所:喜多方市寺町南5006 電話:0241-23-5188 *旬のおかず定食1,000円 http://tukitoohisama.com/ |
13:30 | 「新宮熊野神社 長床」参拝 住所:喜多方市慶徳町新宮熊野2558 電話:0241-23-0775 *参拝料金:300円 |
14:10 | 「IIE」会津木綿をお土産に 住所:河沼郡会津坂下町大字青木字宮田205 電話:0242-23-7760 http://iie-aizu.jp/ |
15:00 | 「五ノ井酒店」で会津の日本酒をお土産に 住所:河沼郡会津坂下町市中一番甲3551 電話:0242-83-2170 |
15:40 | 「会津中央乳業」でべこの乳ソフトクリーム食べる 住所:河沼郡会津坂下町金上辰巳19-1 電話:0242-83-2324 *ソフトクリーム350円 http://aizumilk.com/ |
17:12 | 会津若松駅発(JR磐越西線郡山行き)/郡山でやまびこ154号に乗り換え |
19:48 | 東京駅着 |
今回の旅の費用
交通費:28,000円
宿泊費:6,000円
飲食費:2,250円
体験料:3,200円
合計:39,450円
※2017年2月時点の情報です。訪問する際は、現住所・定休日・営業時間をご確認ください。