特集(復興ビジネスコンテスト2015)
(2022年12月15日時点 アクセスできなくなっています。)
※本記事は、2015年10月12日に「『新しい東北』フォーラム in 仙台」の、リレートークに登壇いただいた際の発表内容を編集して掲載しています。
株式会社フカコラ美人 代表取締役社長 岩手 佳代子
日本一アンチエイジングな街・気仙沼
気仙沼はサメの水揚げ量は日本全国の95%を占め、気仙沼市は昔から良質なサメ、そしてフカヒレの取れる街として有名です。このことを女性の目線で見ると、気仙沼市は、きれいの素である良質なコラーゲンがとれる街ということになります。さらに、海からの潮風には保湿効果があり、気候面でも「きれいになれる街」といえます。そこで、気仙沼市を「日本一アンチエイジングな街」ととらえ、こうした気仙沼のあり方を提案する会社として「フカコラ美人」を立ち上げました。
当初は美容向けのサプリメント等を扱っていたが、徐々に取扱商品が増え、現在ではマリンジュエル、ムース、スープといった商品を扱っています。フカコラーゲンを原料とした商品で「きれいになる」、さらに「見た目でも楽しめる」商品を都内の百貨店向けに提案しています。
気仙沼の魅力ある商品を集めた「ゑびす振舞い」
取引先との商談では、いつの間にか自社商品の紹介から気仙沼の魅力・商品を紹介している場面が多く、取引先からも気仙沼のおすすめ商品のプロモーション要請が多くなっていきました。しかし、当時の気仙沼市の商店等の間では、「量が多くて安い」商品がよい商品と捉えられており、それが「おもてなし」であったため、商品パッケージやデザイン・分量・価格帯が百貨店の客層のニーズとは合致していないという問題がありました。そこで、パッケージなども含めて見直し、「少量・小分け・簡単調理」、を商品開発コンセプトのもとに各店の魅力ある商品を集めて、「ゑびす振舞い」というパッケージで提案することとしました。
縁かつぎ・思い出の詰まったネーミング
「ゑびす振舞い」という商品のネーミングには3つの想いを込めました。1つ目は、七福神にちなんだということであり、そのため7種類の商品のからスタートしています。2つ目は、「ゑびす振舞い」自体の意味に由来するものです。「ゑびす振舞い」とは、本来、大漁の時に、船主さんや船頭さんが自宅で行った「飲めや歌えの大盤振る舞い」を指すもので、縁起がいいため、その縁をみんなに分けるという想いをこめています。3つ目は、震災前に、気仙沼の市場前にあったお店の名前を残したかったというものです。被災後、再開もしないことが決まったため、個人的な思いをネーミングに託しました。
3つの基本コンセプト ~Made in 気仙沼、少量・簡単・小分け、小規模事業者の連携~
「ゑびす振舞い」は、「Made in 気仙沼」「少量・簡単・小分け」「小規模事業者の連携」を基本コンセプトとします。
●基本コンセプト
「Made in 気仙沼」
・地元で古くから親しまれてきた気仙沼ならではの商品、食材を活用
「少量・簡単・小分け」
・現在の食品市場トレンド、世帯、家族構成にあわせパッケージング
「小規模事業者の連携」
・単一事業者では困難である全国展開に向け、統一ブランドを設立
① Made in 気仙沼 ~地域の食文化を残していく~
「ゑびす振舞い」の全ての商品は、気仙沼で昔から愛されてきたもので、残していきたい気仙沼の食文化を後世に伝えるものと位置付けています。そこで、食文化を残していくための工夫をしています。
例えば、「紅白のかまぼこ」は、結婚式の時に引き出物として振舞われるもので本来は50cmほどの大きさで提供されてきたものです。しかし、重いうえに食べきれないため、「紅白のかまぼこ」を引き出物とする文化そのものが廃れかけていました。そこで、「ゑびす振舞い」では、1回で食べきれる「子供の手のひらサイズ」にしました。その結果、地元の方からは「懐かしい」、また外部の方からは「かわいい」とお買い求めいただけるようになり、「ゑびす振舞い」の中心的な商品となりました。
②少量・簡単・小分け
この「ゑびす振舞い」は、30代の働く女性をターゲットとしてデザインしています。働く女性が、自宅でたまにご飯を食べるときに、おいしいものをいろいろ食べたいという希望をかなえ、かつ、残してしばらく冷蔵庫に放置してしまったときにパサパサになってしまったものを見て感じる罪悪感・侘しさをなくしたいということがベースにあります。そのため、「少量・簡単・小分け」にこだわった。こうすることで、女性に対して「おいしかった」そして、「楽しかった」「見た目でも楽しかった」というシーンを提供することを目指しました。
当初、想定していたターゲット層・食卓シーンは30代の働く女性であったが、実際のところは、昔懐かしい味を食べたい方、おいしい魚料理を食べたいというご年配のご夫婦や単身シニアからの人気が高くなっています。うれしい誤算です。
③小規模事業者の連携
気仙沼という街は、あまり横のつながりがありません。同じ水産加工業でも、隣が何を作っているのかはわかりません。さらには、お互いに秘密にしていたようなところすらありました。そういった土地柄ではあるが、自身が気仙沼出身・気仙沼育ちであったこともあり、同級生のコネなど人と人のつながりを大事にしながら、少しずつ連携を広げて、現在の「小規模事業者の連携」形にたどりつきました。最初は、小分けにすること自体、手間がかかるため乗り気ではなかったかもしれないが、少しずつ目に見える成果がでていくなかで、連携の輪も広がってきています。
各事業者とも地域内での販路はあったが、地域人口が減少するなかで外部への販路開拓に取り組まなければならない状況でした。「ゑびす振舞い」販売を通して、販路開拓の支援や外部のお客様からの評価・想いを地域に還元していくことに少しは貢献できたと考えています。
今後に向けて
お土産品としては、ベースの「ゑびす振舞い」に様々な商品をセレクトして「おつまみセット」や「朝ごはんセット」などにできるような選べるお土産品としていくことなども考えていきます。その上で、「ゑびす振舞い」がお土産、贈答品の定番となるように、さらには海外にも出していけるような商品に育てたいとおもいます。