取組概要
山口松之進氏が代表取締役を務める郡山観光交通株式会社が運営する旅行会社として2008年に設立。2015年から生産者の生活の場である畑にキッチンカーを持ち込み、参加者に収穫体験などを通じて生産者の思いや創意工夫を知ってもらうと同時に、その場で生産者とそこで作られた農作物を使ってシェフが作った料理を食べるアウトドアレストラン「FoodCamp®」事業を展開している他、地元密着企業の利点を活かして介護事業やコンビニエンスストア事業などにも取り組んでいる。
タクシー会社の挑戦
――最初に、御社のご紹介をお願いいたします。
郡山観光交通株式会社の代表取締役を務めております、山口松之進と申します。弊社は昭和30(1955)年にタクシー事業を営む会社として福島県の郡山市で創業いたしました。現在では小型タクシー40台を所有しており、その内4台は東京オリンピック・パラリンピックで運営車両として使われていた燃料電池車「MIRAI」をタクシー車両として活用しています。また、平成12(2000)年からは介護事業にも取り組んでおりまして、介護保険制度がスタートしたと同時に、ヘルパーの資格を持つタクシーのドライバーさんが所属する訪問介護事業所「ケアステーション孫の手」を設立し、介護保険による病院の送迎を行っています。その他にも弊社では、今日お話しさせていただく話題の中心になる旅行会社「孫の手トラベル」およびレストラン「Best Table」による観光・フードキャンプレストラン事業、あとは関連事業として自動車の整備工場、クレーン付トラックを用いた運搬事業の他、コンビニエンスストア事業としてセブン‐イレブンを5店舗運営しています。まとめると、弊社はタクシー事業を核に、その関連事業・トラック・コンビニという三つの大きな柱を持った多角化企業グループ、という感じです。
――御社がタクシー事業を始められた経緯についてお聞かせください。
タクシー事業は私の祖父の代に始まったのですが、祖父は元々農業や倉庫業など色々なことをやっていて、そこから事業を多角化していく中で、昭和30年に「田村タクシー」というタクシー会社を立ち上げました。1950年代は日本でモータリゼーションが始まった段階で、特に地方ではまだ車がほとんど走っていませんでしたが、先見の明があったのか祖父は「これから車社会になっていく」と思っていたらしく、なのでタクシー事業をやろうと。それで、当時の山口家は祖父の下に9人の兄弟姉妹がいたのですが、7番目にあたる現会長である私の父と2番目のお兄さんが現場を引っ張っていく形で、そこからタクシー事業がスタートしました。
――御社が取り組んでおられる「FoodCamp®」とはどのようなもので、どういった経緯で始められたのでしょうか?
「FoodCamp®」は、弊社が平成20(2008)年に設立した旅行会社「孫の手トラベル」が事業の一環として平成27(2015)年から取り組んでいる、生産者の生活の場である畑に弊社のキッチンカーを持ち込み、お客様に収穫体験を始めとする様々なプログラムに参加していただき、それを通じて生産者の方々の思いを感じていただくと同時に、その場で生産者さんと一緒に、そこで作られた農作物を使ってシェフが作った料理を食べるアウトドアレストランです。うちのような旅行会社がなぜ「FoodCamp®」を始めたのかと言いますと、大きな理由としては「郡山の魅力を開拓したい」ということが挙げられます。郡山は東日本大震災の被災地の一つですが、震災以前から郡山では「郡山ブランド野菜協議会」という団体が活動していて、私もそこに所属しておられる方々や生産者の皆さんと交流したり、地元の青年会議所を通じてボランティア活動をしたりしていました。
ところが、震災によって放射能が福島県全域に降り注いだ結果、平成23(2011)年にできた農作物は全て出荷停止になってしまった。そこからいかにして福島の農業を再興していくかを考えたときに、例えば「土をどうしよう」とか「放射能の被害を受けにくい作物は何だろう」とかいった話になるわけですが、関係者の方々から色々とお話を伺っていると、しっかりと科学的なことを考えておられるんですね。農家さんは家が代々その仕事をしていることが多く、そのため他に仕事ができないから農家を継いでいると誤解されがちですが、実際に見聞きすると、生業を続けるためにててもレベルの高いことをしておられます。私自身、農家さんからそういうお話を伺って収穫した作物を食べさせていただいたんですが、やっぱり凄く美味しいんですね。なので風評被害をなくすためには、実際に畑での活動に参加して、そこで感じた感動を多くの方々に体験していただければ、生産者の頑張り具合や安全性、さらには収穫物の本当の味が分かるんじゃないかと思い、農家さんやシェフの方々のご協力の下「FoodCamp®」をスタートさせました。
あと、「FoodCamp®」を始めた理由はもう一つあって、それは「本当に頑張っている生産者をヒーローにする」ということです。どういうことかと言いますと、第一次産業である農業については、日本では震災以前から「単に生産物を作ってそのまま売るのではなくて、何らかの付加価値を付けなければならない」ということがしきりに言われていました。これは、日本は農業における生産数がそもそも少ないからなのですが、そのため国や自治体は生産者に対して、第一次産業における生産だけでなく、第二次産業における製造・加工、第三次産業における販売にも力を入れて取り組んでもらうという、いわゆる「六次産業化」を奨励しています。
でも、私自身はそうした流れに対して凄く違和感がありました。要するに、「農家さんは美味しい野菜を作ろうと日々努力しておられるし、それだけでも大変なことなのに、それに輪をかけて加工や販売までやらないと『良い農家』と評価されないのはおかしいのではないか」と思ったんですね。そこで、弊社がお客さんを連れてくることで農家さんの頑張りを見ていただき、地産地消のお手伝いをさせていただくと同時に、優れた作物を育てておられる農家さんの姿や思いをお客さんに知っていただく。そうすることで、農家さん単独では難しい「六次産業化」をチームによって達成するだけでなく、頑張っておられる生産者がきちんと評価されるのではないかと思い、そのための取り組みとして「FoodCamp®」を始めました。
「食」を通じた「地元の価値の再発見」
――その場で収穫した作物を食べるだけでなく、畑を使って青空レストランをやるというのはなかなか大胆な発想だと思うのですが、なぜ「FoodCamp®」はこうしたスタイルで行われているのでしょうか?
大きな理由が二つありまして、一つは「今から食べる作物が育った場所や工夫について、生産者の方から直接教わることができるから」です。弊社の「FoodCamp®」では様々なプログラムを用意していますが、例えばあるアスパラガス農家さんで実施した「FoodCamp®」では、収穫体験をする前にクイズを参加者の方々に出題しました。なぜこうしたことをやっているのかと言いますと、単に収穫作業をしてもらうだけではなく、体験全体を通じて、この生産者がどういうところにこだわってるのかとか、この土地はどういう場所なのかとか、風の吹き方や土の柔らかさはどうなっているのかとか、そういうことを知っていただきたいからですね。そうやってそこで収穫された作物の知識や生産者さんの思いを知り、さらにはそこで作られた作物を使った料理をその場で食べることで、「作られる場所」と「食べる場所」の地続き感、言い換えれば「作る」と「食べる」の連続性を意識していただくというのが、「FoodCamp®」の狙いの一つです。
ちなみに、今申し上げたことについては、福島県という場所のある意味での特殊性が大きく関わっています。例えば、青森ではリンゴ、山梨ではブドウがそれぞれ有名ですよね。それらのように、それぞれの地域に日本一の生産地がありますが、そういう地域がなぜあるのかと言うと、その地域の気候や環境がその作物の生産に向いていて、沢山の人が作るから生産量が多くなるからです。一方で福島県の場合、四季の変化がはっきりしているので、逆に言えば何を作っても作れるんですね。そのため、「皆で同じものを作ろう」という発想があまりなくて、それぞれの農家さんが個別に色々な作物を作っておられるわけです。なので、一つ一つの作物は生産量だけ見れば他の地域と比べて少ないのですが、その反面、本場にも負けないくらい美味しいものが沢山作られています。だけど、そうしたお一人お一人の工夫や考えって、単にできた作物だけを見ても伝わらないですよね。だから私たちの「FoodCamp®」では、そのお一人お一人のこだわりや思いをお客様に知っていただけるように、農家さんに赴いて複数回のヒアリングを実施させていただき、その上で農家さんの取り組みが一番伝わるようプログラムを組んでいます。もちろん、そのプログラムは農家さんや作物によってそれぞれ異なり、例えば収穫した野菜を生でかじってみたり、畑に寝っ転がって土の柔らかさを感じてみたり、ワインであれば畑を眺めつつワインを飲みながら生産者さんにお話ししていただいたりと様々です。こういう具合に、収穫した作物を使った料理を食べる前に、その作物や生産者さんのことを深く知る時間を設けているのが、「FoodCamp®」の大きな特徴になっていると思います。
それからもう一つは、「生産者の方に自分たちが作った作物の素晴らしさを知っていただきたいから」です。私たちの「FoodCamp®」では、シェフが作った料理をお客様だけでなく、生産者の方も一緒にテーブルを囲んで食べていただいています。そうすることで、生産者は食べる人の喜ぶ姿を直接見ることができ、さらには自分たちが作っているものの良さを改めて認識することができるんですね。先程も申し上げたように、現在の農業では「六次産業化」が推奨されていて、良い作物を作るだけではなかなか評価されません。だけど、私たちは頑張っている農家さんをヒーローにしていきたいし、「こんなに美味しいものを作っている農家さんはこれだけ凄いんだぞ」ということを多くの方々に伝えたい。でも、農家さんは普段とてもお忙しいし、消費者の反応を直接知る機会はほとんどありません。そのため「FoodCamp®」では、畑にキッチンカーを持ち込ませていただき、生産者の方にもテーブルをお客様と一緒に囲んでいただいて、一緒に料理を食べていただいています。幸いなことに、私たちの取り組みに協力してくださる多くの農家さんからは「自分の作った野菜を食べて喜んでくれるお客さんの姿に感動した」や、「大変な仕事だけど、農家を続けていて良かった」といったお声をいただいています。
それはその通りですし、より掘り下げて言えば「地元の価値の再発見」が「FoodCamp®」におけるテーマになっています。農業にしてもそうですが、自分たちが普段当たり前にやっている仕事や作られたものの価値って、往々にして分からないものだと思います。それに気付くためには、やっぱり外からの評価が必要になるんですよね。だけど先程も申し上げたように、農家さんでは消費者の声を直接聞く機会はほとんどありません。加えて残念なことに、日本の農家さんの多くはとても苦労して日々の仕事に取り組んでおられるのに、収入や後継者などの問題で事業の継続を諦めてしまう方も少なくありません。なので、私たちとしては「FoodCamp®」を通じて、生産者の方々に自分たちの凄さを再認識していただきたいと思っていますし、仕事に対する自信を取り戻すお手伝いが少しでもできればと考えています。
ちなみに、このことはシェフを担当してくださる方々についても同じことが言えると思います、頑張っておられる農家さんもそうなんですが、シェフも優れた人ほど「自分のテクニックがあるからこそ美味しい料理ができる」と考えている方は非常に少ないんですね。そういう方の多くは「生産者が美味しい作物を作ってくれるから美味しい素材があって、だからこそ自分は料理人をさせてもらっている」と思っておられる。だけど、「料理」という営みは素材をより美味しく食べるために、人間が長い時間をかけて編み出してきた技術の結晶です。一口に「美味しい作物」と言っても、生でかじっても大して美味しくなくて、調理することで初めてその真価が発揮される作物もあります。「FoodCamp®」ではそこで収穫された作物を前菜からデザートまで全ての料理に使いますが、作物の良さを様々な側面から味わうためにはシェフの力が必要不可欠ですし、生産者にもシェフにも、料理を通じて自分たちの仕事の素晴らしさをお互いに知っていただくことを私たちは目標としています。
「日常/非日常」の垣根を外していく
――私事で恐縮なのですが、郡山には「クリームボックス」という、厚切りの食パンにミルク風味のクリームをたっぷり塗ったご当地グルメがありますよね。最近ではセブン-イレブンが福島県外でも販売を始めましたが、郡山出身の人に以前「郡山土産はクリームボックスがいい」と言うと、「えっ、他のところにはないの?!」という反応が返ってきました。こうしたことも、その地域の人にとっての当たり前が別の地域では当たり前ではないという意味で「地元の価値の再発見」なのかなと思いました。
確かに郡山の人間であれば、「クリームボックス」は子供の頃から当たり前のように食べていますからね(笑)。とはいえ、そのご指摘はとても重要なことだと思います。どういうことかと言いますと、私たちはよく「日常/非日常」みたいな分け方をしますよね。例えば、農家さんにとって「畑」は日常なんだけど、「FoodCamp®」のお客様にとって、そこは非日常の場所です。そうした日常と非日常の交差が「観光」の原点だと私は考えていて、「クリームボックス」を当たり前のように食べていることが非日常の方々にそうした日常の存在を知っていただくこと、それらが実は地続きにあるものだと体験を通じて理解していただくことが、観光においては大事なことだと思います。一応、「FoodCamp®」の畑にレストランというのは、確かに非日常かもしれません。だけど、その場所自体は農家さんにとっては日常の場所です。なので、その圏外から来た人たちにそこの日常を理解していただくことが重要ですし、だからこそ、農家さんが本当に普段やっておられる農作業を一緒にやっていただくということを「FoodCamp®」では意識しています。
――今のお話を踏まえて考えていくと、「FoodCamp®」における作物を他の名物と比較した場合、それが企画されたものかどうかという点、さらには地元の方々にとって当たり前のものかどうかという点で、大きく違うように思いました。
実際そうだと思います。この事業が成り立っているのも、「地元に美味しいものがある」ということがそもそも前提にあって、元々は地元の人たちがそれを普段美味しく食べていて、その土地を訪れた人にも食べることをすすめていく過程を通じて、初めて「名物」というものができると個人的には考えています。ただ、今の観光はそういう流れが歪になっているように感じます。例えば、現在の観光業界では「インバウンド」が重要視されていますが、この言葉には「外貨を稼ぐ」や「旅行に行きたい人は財布の紐が緩いからとにかく高く売る」ということが少なからず含意されています。そのため、多くの地域では躍起になって名物や名産品を作ることに取り組んでいますが、そうして作られた観光商品って、地元の人はまず買いませんよね。でも、旅行者は「●●名物」というキャッチコピーを見れば、そこに行った証明としてそういうものを買っちゃうわけです。私としては、やっぱり地元の人が美味しいと思っているものを食べたり、美味しいと思っているお店に行ったりすることが本来の「観光」だと思っていますし、「FoodCamp®」にしても、まずは地元の人に作物の良さや農家さんの思いを知っていただいて、それが外に広がることで新たな名物やブランドができていくのが、ごく自然な意味での「地元の価値の再発見」ではないかと考えています。
――「日常の価値の再発見」や「日常と非日常の交差」をより進めていく方法として、現在考えておられることは何かありますか?
最近取り組んでいることとしては、生産者やシェフのことをより深く知れるファンサイト作りを現在進めています。幸いなことに「FoodCamp®」については今の時点でも多くのリピーターがおられますが、「地元の価値の再発見」という意味では、単にリピーターを増やすのではなく、「日常/非日常」の垣根を外して、自分たちの日常と生産者やシェフの日常が地続きにあるということを、実感を伴う形で知っていただければと考えています。なので、例えば生産者やシェフの日常について発信したり、「あそこに行けばあの農家さんの野菜が買えますよ」とか「このお店に行けばあのシェフの料理が味わえますよ」とかいったことをお知らせしたりすることができればいいな、と。一応、プログラムのアーカイブについてはすでに私たちのホームページに載せていますが、ただ紹介するだけでは面白くないので、今後はそれを発展させる形で、私たちが窓口になってその生産者の作ったものを売ったり、加工しているところを見学したりして、作り手と消費者、作り手同士、消費者同士の三方の交流が活性化するような仕組みを作っていきたいと思っています。
「楽しい」と「美味しい」から環境について考える
――「FoodCamp®」のプログラムについて、今後どういったことをやっていこうと考えておられますか?
これはプログラムの内容というよりかはパッケージに関することなのですが、ツアー価格についてはずっと意識しています。「FoodCamp®」の立ち上げにあたってはモニターツアーを2年間やったのですが、この事業をビジネスとして成立させるためには、ある程度のお金をいただかないと難しいんですね。一応、食器を紙製にしてみたりとコスト削減のために色々と試行錯誤してはみたのですが、削減できる限界があります。そのため、「FoodCamp®」は一般的なツアーと比較して少し高めに価格を設定しているのですが、価格自体が参加に対する壁になり過ぎるのもよろしくない。かといって、貴重な体験を安売りするのもまた違う。「FoodCamp®」では最初お一人様1万2800円という価格帯からスタートして、現在では1万8700円のツアーがメインのパッケージになっています。これよりも高いツアーもありますが、今も申し上げたように価格を上げ過ぎるとお客さんにとっては参加の障壁になりますし、その価格に見合った商品やサービスなどのクオリティを上げることは大変で、やり方を誤るとインバウンドと何も変わらなくなってしまいます。なので、今は高価格帯のツアーの内容をいかに価格に見合ったものにできるかを考えつつ、並行して食育の入口となるようなお手頃な価格帯のツアーを作れないか検討しています。
あと、今日お話ししたように「FoodCamp®」という体験については、生産者やシェフの日常、地域や自然の循環などを理解するところにその意義がありますが、「食べる」以外の部分を何らかの形でパッケージにできないかということも現在考えています。環境問題については「SDGs」という言葉が登場してから広く意識されていますが、そうした自然の循環を実際に体験する機会って、普段はそう多くありませんよね。なので、「食べる」以外の体験をセットにして、それを個人旅行ではなくて企業さんの福利厚生とか、あるいは社員の方々が環境について考える研修とか、そういう形で利用できるパッケージを作れればと最近は思っています。
――最後に、御社の今後の抱負についてお聞かせください。
今日は「FoodCamp®」について色々お話しさせていただきましたが、私としては福島に限らず、色々な地域でこのスタイルを使って、それぞれの「地元の価値の再発見」をしていただけるようになればいいなと考えています。日本には地元の方々が気付いていない良さがまだまだ全国に沢山あると思うので、いずれは「FoodCamp®」を県外に輸出して、日本中の隅々に眠っている価値を掘り起こすお手伝いをしていきたいですね。「FoodCamp®」という名称についてはうちが商標を持っていますので、この名前を使って全国各地で色々な取り組みを繋げていけば、日本中の人がもっと田舎の本当の良さを知るために地方へと散らばっていく可能性もありますし、それこそ海外からも本当の日本を学びに、日本中の隅々まで観光してくださるような方が出てくるかもしれません。
あと、今回「復興・創生の星顕彰」に選んでいただきましたが、このこと自体については大変ありがたく感じている一方で、「『FoodCamp®』を復興の象徴に留めてはいけない」とも思っています。確かに「復興」は大事なことなんだけれども、最初から「復興を学ぼう」とか、あるいは「原発事故について知ろう」とか考えている人って、おそらくはもう福島を訪れているんですよね。だけど、世の中はそういう意識を持っていない人の方が圧倒的に多い。これは「意識が高くないから駄目」というわけではなくて、そういう意識のない人の方が、世の中ではむしろ普通なんです。辛いことやしんどいことに耐えるのにも限度があるし、楽しかったり美味しかったりしないと、人間は絶対に続きません。だから「復興のため」とか「環境のため」とか言っても、辛いと人は離れていきますし、楽しければ続けられる。なので、私としてはこの「FoodCamp®」が、普通の人が楽しく、そして美味しく環境について考える入口になればいいと思いますし、そうした面白さが、縁遠いように感じている環境問題を自分事にしていただくきっかけになれば幸いです。
株式会社孫の手(孫の手トラベル)[福島県郡山市]