第5弾 避難した障害者の「仕事」と「未来」を創る(特定非営利活動法人 しんせい)


 福島県郡山市を拠点に活動する非営利活動法人「しんせい」では、震災によって故郷に帰ることが難しく、避難生活を続けている障害者に働く場所を提供し、避難先で安心して住み続けられるような支援を展開している。「新しい東北」復興・創生顕彰は、しんせいと連携・協働する多くの企業、NPO、福祉事業所、そして障害者とその家族にとっても誇りにつながったという。


被災地の障害者福祉を支援するネットワークの中心を担う

JR郡山駅から車でおよそ10分。市街地を東西に走る幹線道路から路地を少し入ったところに特定非営利活動法人しんせいの事務所と作業所がある。

 しんせいでは、障害によって就職する事が困難な人に対して、雇用契約を結ばず作業分のお金を工賃として支払う非雇用型の就労継続支援を行っている。この日も、1階ではお菓子の発送作業、2階ではミシンを使った布マスクづくりが行われていた。

 「布マスクのプロジェクトは、パートナー様からのお声がけで始まりました」と理事長の富永美保さん。「パートナー」とは、しんせいと協働する企業やNPO、NGOなどのこと。布マスクの事業は、大手IT企業との協働で行われ、同社が運営するショッピングサイトでも購入することができる。


企業の技術指導を得て新たな仕事を生み出す

しんせいは、震災による避難で福祉サービスの利用が困難となった障害者の受け入れや、福島県内の13の福祉事業所が連携・協働し障害者の仕事を創出するための事務局などを担っている。

 福島第一原子力発電所の事故により、双葉郡にあった福祉事業所は、郡山市や福島市、二本松市などへの移転を余儀なくされた。各事業所では、他地域への避難により利用者や職員が減少したり、風評被害などで商品が売れなくなったりするなどの課題が生じた。

 震災後に「JDF被災地障害者支援センターふくしま」のボランティアスタッフとして、支援物資を障害者に届けるボランティア活動などを行っていた富永さん。センターには支援の一環で首都圏の企業やNPOなどから仕事の依頼が届いたという。



 「それぞれの仕事の規模が大きく、一つの事業所だけでは抱えきれませんでした。そこで、福祉事業所同士が手を結び、協働すれば、大きな仕事でも引き受けることができるのではないかと思いました」。こうして、富永さんは県内の福祉事業所に声をかけ、全国の企業やNPOなどと連携しながら障害者の仕事を創出する取り組みを始めた。

 お菓子の製造では、各事業所で品質をそろえるため、製粉メーカーの商品開発部門の研究員が協力し、レシピを研究した。また、ミシンの技術を学ぶプロジェクトを立ち上げ、デニムカバンやティッシュケースなどの商品を開発。プロジェクトには、ミシンメーカーが協力した。


顕彰の喜びを多くの人と分かち合う



「新しい東北」復興・創生顕彰の受賞が発表されると、しんせいと協働する企業やNPOの関係者から、祝福の声が多く届いたという。

「パートナーの皆さんと喜びをシェアすることができてよかったです」と笑顔で話す富永さん。「震災によって生まれたご縁です。地域や業界の垣根を越えて障害者福祉についてこれからもよい関係を続けていきたいですね」

さらに受賞は、施設を利用する障害者とその家族にとっても大きな喜びとなった。「震災後に故郷を離れ、不安を抱えながら生活を始めた皆さんが、今回の受賞によって、『ここで仕事ができてよかった』と思っていただけるとうれしいです」と富永さんは感慨深げに語った。



特定非営利活動法人 しんせい [福島県郡山市]
https://shinsei28.org/