第3弾 地域を越えたネットワークで風評被害を乗り切る(特定非営利活動法人 がんばろう福島 農業者等の会)


 福島第一原子力発電所の事故の影響による風評被害に直面する福島県内の農業者らが助け合い、農業体験活動やオンラインショップの運営などを通して全国の消費者との交流を図っている特定非営利活動法人 がんばろう福島 農業者等の会(以下、「がんばろう福島」)。「新しい東北」復興・創生顕彰は、スタッフにとって「誇り」と「やりがい」につながった。


「福島県産」のイメージ回復に取り組む

6月上旬にも関わらず、この日福島県内では猛暑日を記録した。農業生産法人 二本松農園では、来週から始まるキュウリの収穫の準備が進んでいた。「今年の出来は、まずまずかな」と農園を経営する齋藤登さんは満足げに話した。

 二本松市駅から車で20分ほど、静かな中山間地に二本松農園はある。約8ヘクタールの水田や畑で、米や野菜などを作っている。農園全体を見渡すことができる丘に案内されると、福島第一原子力発電所から約50キロメートル地点を示す看板が目に留まった。

 「原発事故によって、福島の農家はかつてない苦境に立たされました」と齋藤さん。「顔の見える関係に風評被害はなし」を合言葉に、2012年にNPO法人を立ち上げ、54の生産者と一緒に福島の農業のいまを発信する取り組みに汗を流している。


駆け込み寺となったオンラインショップ

震災直後、出荷制限や風評被害の影響で、福島県産の農産物は「突然売れなくなった」という。そこで、齋藤さんは二本松市内の農家と共同で2011年5月にオンラインショップを始めた。

「福島の農業を応援したい」と全国の消費者から注文が入り、メディアで取り上げられると、風評被害に苦しむ県内の農業者から「うちの農産物も売ってほしい」と問い合わせが殺到した。オンライン販売がきっかけで、大企業の共同購入に発展したり、購入者と農家との交流が始まったりと、新たなファン獲得につながったという。



 「中には、売り上げが震災前よりも上回った生産者もいらっしゃいます。活動を通して、消費者の皆さんと直接つながることの大切さをあらためて感じることができました」と話す齋藤さん。2019年10月からは、農産物を積み込んだ車を走らせ、週2回のペースで都内の企業で販売する「企業内マルシェ」を実施している。

 現在、新型コロナウイルス感染症の影響で企業内マルシェの活動は休止を余儀なくされている。そこで、一人親世帯などの生活困窮家庭に農産物を届けるプロジェクトが始まった。2019年12月に採用されたばかりの新人スタッフ、猪戸美香さんのアイデアである。


顕彰で得た誇りと充実感

 齋藤さんは、「新しい東北」復興・創生顕彰について「福島県の農業のことを多くの人に理解してもらうきっかけにつながればと応募しました。選ばれてとてもうれしいです」と話した。

 その隣で猪戸さんが「私も顕彰式に同席させていただきました。交流会で知り合った方に、収穫したニンジンを贈って、とても喜ばれたんですよ」と続けた。浪江町からの避難者で、不安な日々を送る猪戸さんは、今回の顕彰で大きな誇りを手に入れることができたという。楽しそうに話す猪戸さんの姿に齋藤さんは、「前よりも生き生きとした明るい表情になりましたね」と笑顔をみせた。

 これからも消費者や企業との「顔の見える関係」を大切にしながら、新しい農産物の流通の実現を目指す「がんばろう福島」。齋藤さんは、「農業や農産物を介した新しいコミュニティをつくる準備を進めています」と今後の展望について静かに語った。



特定非営利活動法人 がんばろう福島 農業者等の会 [福島県二本松市]
http://www.farm-n.jp/fukushimafarmers/