第2弾 被災した故郷を面白く「バージョンアップ」する(一般社団法人 ISHINOMAKI2.0)


 「世界で一番面白い街を作ろう」をモットーに、人口流出やコミュニティの希薄化といった地域課題解決に挑む一般社団法人 ISHINOMAKI2.0。石巻市内外の人を巻き込んだネットワークを形成し、多方面からまちづくりを展開している。「新しい東北」復興・創生顕彰への応募も、「つながり」がきっかけだった。



オープンでクリエイティブな活動拠点

 JR石巻駅から歩いて10分。商店が軒を連ねる2つのメイン通りが交差する場所に「IRORI石巻」がある。道行く人が気軽に訪れ会話を楽しむ、市民の新たな交流の場として定着している。

 「ここは、もともと津波で被災したガレージがあった場所なんです」と一般社団法人 ISHINOMAKI2.0で代表理事を務める松村豪太さんは話した。2011年12月に、同団体のメンバーや世界的家具メーカーの職人らがDIYで作り上げた。

 こうして、オープンシェアオフィスとして誕生したIRORIは、2016年に大規模な改装が行われ、コーヒースタンドや多目的ホールを備える現在の姿に。ISHINOMAKI2.0の活動拠点でもある。

 IRORIは、「石巻を震災前に戻すのではなく、新しく作り変えたい」という同じ想いを持った人たちが、オープンかつ緩やかにつながるISHINOMAKI2.0の活動の象徴ともいえる場所である。

 「このまちの未来について考える場として、市内外から多くの人が集まりました」と松村さん。これまで、個性的で面白いプロジェクトがここから50以上も生まれている。



全国から人を呼び寄せたブログ

 石巻市出身の松村さんは、東北大学大学院を修了後もしばらくの間、仙台市内で過ごした。そして、石巻市に戻り、叔父が立ち上げたNPO法人の運営の手伝いなどをしているときに東日本大震災を経験した。

 津波によってNPOの事務所が入っていたビルの1階部分の天井まで浸水し、2階で避難者と共に不安な夜を過ごしたという松村さん。その後、ヘドロを除去するボランティア活動をしながら、毎日の活動やまちの様子をNPOのブログで発信すると、「力になりたい」と全国から松村さんのもとに人が集まった。

  元の旅館経営者や東京の建築家、大学教員、広告代理店のクリエイターなど。電気も通っていない建物の一室で、多彩な人たちと石巻の将来像を語る中、今までにない新しいまちづくり団体を立ち上げる機運が高まりをみせた。



 「閉鎖的だと感じていた石巻でも、このタイミングならこのまちを面白くするような新しいことができるのではないかとワクワクしました」と松村さんは振り返る。

  こうして、2011年5月にISHINOMAKI2.0が発足。松村さんらメンバーが大切にしたオープンで緩やかなつながりは、その後もさらに広がりを見せ、コミュニティづくりやローカルベンチャー支援、教育事業など、様々なアプローチから成るまちづくり活動へと発展していった。



顕彰を誇りに持続可能なまちづくりの道を邁進

 「新しい東北」復興・創生顕彰への応募について、「以前、仕事で関係した方から、推薦したいと連絡がありました」と松村さんは話す。「その後、受賞の報告をいただいた時は、率直にうれしかったですね」

 2020年2月に仙台市で行われた顕彰式の報告を、SNSを通じて発信すると、松村さんのもとには、全国からたくさんの「いいね」が届いた。「あらためて、これまで支えてくださった多くの仲間や応援者の存在を実感し、とても感謝しています」と語った。

震災から間もなく10年。がれきに囲まれた薄暗い部屋から生まれた活動が、国からも一目置かれるまでに成長を遂げたことに、「誇り」を感じているという松村さん。単なる復興にとどまらない、持続可能な「世界一面白い街」をつくる——。設立当初から掲げている理念を胸にISHINOMAKI2.0の挑戦はこれからも続く。




一般社団法人 ISHINOMAKI2.0 [宮城県石巻市]
https://ishinomaki2.com/