第1弾 誰もが私らしく輝けるまちをつくるために(特定非営利活動法人 石巻復興支援ネットワーク(やっぺす))


 企業やNPO、行政などと協働し、仮設住宅の住民のコミュニティ形成支援や、女性や若者の活躍推進などを行っている特定非営利活動法人 石巻復興支援ネットワーク。石巻の方言で、「一緒にやりましょう」を意味する「やっぺす」を愛称に掲げ、同じ目線で寄り添うことを大切にしたいという理念が、顕彰式の会場でも垣間見えた。



受賞の喜びを共に分かち合う

 被災地の課題解決に挑戦する優れた取組を行う個人・団体を復興大臣が顕彰する「新しい東北」復興・創生顕彰。令和元年度は募集総数147団体の中から9団体が選出された。

 2020年2月14日。仙台市内で開催された顕彰式の会場で、受賞団体の一つ、特定非営利活動法人 石巻復興支援ネットワークで代表理事を務める兼子佳恵さんが登壇した。この日は、石巻市内にある復興公営住宅の住民たちも同席し、これまでの取組を紹介する兼子さんの話に頷きながら耳を傾けていた。

 「この賞は、この会場にバスで朝早くから駆けつけてくれた住民の皆さんと一緒にいただいた賞だと思っています!」と兼子さんが視線を送ると、住民たちは大きく手を振り、互いに喜びを共有した。



仮設住宅の住民や活躍したい女性に寄り添う活動を展開

 「石巻に住む普通の住民の私でも仲間と力を合わせれば、地域を元気にすることができる『住民力』を信じてほしいというメッセージを発信したかった」と応募の動機について話す兼子さん。それだけに、「新しい東北」復興・創生顕彰は、住民に力を与えてくれたという。

 「だから、受賞が決まった時はとても感激しました。顕彰式に参加するにあたり、私たちの活動の出発点ともいえる復興公営住宅の住民の皆さんに光を当ててほしいと思い声をお掛けしたんです」

石巻復興支援ネットワークは、震災直後から仮設住宅でのコミュニティ形成支援を行ってきた。復興公営住宅などへの移転が完了した現在は、コミュニティが再度分裂されることで閉じこもりがちになった住民を支援している。

 また、女性活躍推進にも取り組み、内職の仲介や就業支援、起業支援など段階に応じた支援活動を展開。さらに、小さい子どもを持つ母親に寄り添い、子育てしやすいまちの実現に向けた環境づくりにも精力的に取り組んでいる。




スタッフの希望となった「新しい東北」復興・創生顕彰

 石巻復興支援ネットワークが女性活躍推進に取り組んでいる背景には、かつて子育てに悩んでいた兼子さん自身の経験によるところが大きい。

 「震災前から、子育てのしづらさや女性の就労の難しさ、女性活躍のハードルの高さを身に染みて感じていました」と兼子さん。同時に、一部の人だけがまちづくりに参加する雰囲気があり、女性や若い世代が活躍する機会が少ないと感じていたという。

 兼子さんは、震災後すぐにNPO法人を立ち上げ復興支援を進める中で、もともと地域に住んでいた女性や若者、高齢者にスポットライトを当てた。そして、これまで出番が少なかった人たちが「自分らしく生きること」を叶えられるまちを目指そうと考えた。

 こうした理念に共感し集まったスタッフたちも、様々な支援活動を通して自らの活躍の場を見つけているという。「震災から10年の区切りを迎える前の、このタイミングで受賞できたことは、とても良かったと思っています。これまで共に頑張ってきた住民の皆さんやスタッフにとって大きな励みになったはずです」と兼子さんは目を細めた。




特定非営利活動法人 石巻復興支援ネットワーク(やっぺす)[宮城県石巻市]
https://www.yappesu.jp/