第10弾 釜石人の“開かれたマインド”が町の魅力を再構築する(一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校)


東日本大震災後間もなく発足した一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校は、地域資源にスポットを当てた体験プログラムの提供などを通じて地域の魅力の発信や関係人口の創出、人材の育成を行っている。そのコンセプトは、「地域のために立ち上がり、挑戦する人が多いまち、釜石」だ。取り組みの核には常に、釜石と共に生きてきた人々の存在があった。


関係人口を増やし、育てる「ボランティア・コーディネーター」

一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の代表理事、伊藤聡氏が、東日本大震災に見舞われたのは釜石市の旅館「宝来館」に勤務している時だった。精力的な活動で知られる女将、岩崎昭子氏と伊藤氏は、被災の約2週間後には早くも「宝来館」の再建に向けて動き出す。


やがて宝来館は、ボランティアがやってくるだけでなく、ボランティアに関連する情報拠点として機能するようになる。「ボランティア・コーディネーターという言葉があることすら知りませんでした」と言う伊藤氏だったが、自然にコーディネーター役を受け持っていた。


その伊藤氏が、「ボランティア・コーディネーター」の役割や働きについて正しく知ったのは、内閣府の復興支援型地域社会雇用創造事業の一環で「社会的企業」の起業家を養成する事業でのこと。この事業は、講義とインターンシップを受け、起業の企画書を作成して合格すれば、起業支援金を受け取って起業できるというもの。伊藤氏は「ボランティア・ツーリズムから釜石観光振興へ」という企画書をまとめ、見事に合格する。


2012年4月、伊藤氏は、同じく起業支援金を受け取ることができた柏﨑未来氏とともに、一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校を設立する。以来、三陸ひとつなぎ自然学校は、伊藤氏の「観光」、柏﨑氏の「子ども」の2つを軸にした事業を展開してきた。現在は、釜石の人や暮らしなどの魅力を満喫する体験プログラムの実施、大学などのボランティア・スタディー・ツアーのコーディネート、釜石でのインターンシップのコーディネート、「放課後こども教室」の運営などを行っている。


伊藤氏たちの事業の中心は「人」。2015年3月に始めた「かまとら」というプログラムでは、釜石のさまざまな分野の専門家である「鉄人」と一緒に、地域の自然環境、料理や伝統行事、産業などの魅力を再発見したり、考えたりする内容になっている。現在「かまとら」は「Meetup Kamaishi」と名称を改め、釜石全体で取り組むものに成長した。


「人」に焦点を当てた取り組みが、釜石で活発に行うことができるのは、「釜石が企業城下町として発展し、外から来る人に抵抗感がなく、交流がスムーズにできたからではないでしょうか」と、伊藤氏は分析する。


これからは連携と交流の輪を、釜石市以外の三陸各地へと広げていく必要があると言う伊藤氏。「Meetup Kamaishi」のビジョンを三陸全体に広げて共有し、「Meetup Sanriku(三陸)」になればいいと考えている。


一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校(岩手県釜石市)
http://santsuna.com/