Fw:東北Fan Meeting 2022 東北デジタル創生塾Vol.9地域プロモーションでのデジタル活用の道を探る ~地域ブランド×地域産業データ×地元人材で挑む宮古市の事例から考える イベントレポート
人口減少社会となり、東北のあらゆる地域でも、人、モノ、カネ、情報などあらゆる流れに活力を取り戻すための工夫が求められています。
岩手県宮古市では、地元の若者の人材育成を中心とした地域プロモーション事業に取り組み、「地域色を活用した情報発信」「地域産業データのデータベース化」「若年層を中心としたデジタル人材の育成」を手掛け始めています。このような活動に至った経緯や、具体的な活動、そしてその先にある未来とはどのようなものなのでしょうか。
今回の東北デジタル創生塾では、ゲストに宮古市役所より地域創生交流推進室長の中居裕美さんをお招きし、同市の地域プロモーションについてお話を伺い、地域で動き出した若手の方々も交えつつ、デジタル活用について議論が行われました。
また、総務省 地域情報化アドバイザーとして、室蘭市役所の丸田之人さんをお招きし、地域活性におけるデジタル活用のポイントや、地域プロモーションにおける地域間連携の可能性などについても、意見を交わしました。
インプットトーク
中居 裕美 氏(宮古市 企画部企画課 地域創生交流推進室長)

中居さんから地域ブランド×地域産業データ×地元人材を活用した地域プロモーションについてお話いただきました。
東日本大震災から約10年がたち、宮古市には震災当時子どもだった若者のUターン、インターンシップに参加した若者の移住、宮古で活躍する若者に惹かれた若者もやってきているそうです。人が惹かれるのは、観光地だけではない、人もまちの資源だったことに気づいた、とのことでした。
地域色を活用したシティプロモーションの取り組みが紹介されました。宮古市では地域資源から色を選定し色と物語を伝える「一般社団法人日本地域色協会」と協力し、市民参画によって地域色「浄土ヶ浜エターナルグリーン」が誕生しました。浄土ヶ浜遊覧船や万年筆インク、地酒「amane」などに活用されています。
また、「地域ブランド×地域産業データ×地元人材」を活用した「三陸宮古のいいイロプロモーション」についてもご説明いただきました。
宮古市の今後の展開として「まちが稼ぐエンジンをつくる」をキャッチフレーズに、デジタルスキルを持ったビジネス人材、これまで地域内になかった職種、地域商社やふるさと納税中間事業者を作り上げることを目指している、とコメントしてくださいました。
平井 匠 氏(三陸宮古のいいイロプロモーション全体会議 事務局)

平井さんは、海浜幕張にある神田外語大学の学生です。大学2年生の時にコロナ禍になり、首都圏での活動が縮小する中で実践的なスキルを身に着けたいと思ったそうです。宮古市の地域おこし協力隊との出会いがあり、「1年間宮古市で実践的に活動してみないか」と誘われ、大学を休学して宮古市へ「プチ移住」されました。
平井さんは、宮古市で地域企業の伴走支援、プロモーションサイト立ち上げのPMや企画の立案、プランニングディレクションなど、「自分でも思っていなかった大きな仕事を任されています」とのことでした。
丸田 之人 氏(地域情報化アドバイザー/室蘭市 経済部緊急経済対策室 室長)

丸田さんから「室蘭×観光×DX」についてお話いただきました。
室蘭市の観光分野でのデータ活用の取り組みとして「KDDI社」との連携協定を結び、観光客の入込客数を数えることができる「人数カウントAIカメラ」、「ニューラルポケット社」との連携協定を結び、性別や年齢層などをAIで分析する「AIカメラ付デジタルサイネージ」が実施されています。
新しい観光コンテンツの取り組みでは「白鳥大橋主塔登頂クルーズ」、絶景と音楽を中心に地域の素晴らしい資源をDJミュージックと共に世界に発信し地域活性化を目指すプロジェクト“High in Japan”が紹介されました。
また、プレミアム付商品券事業のDXとして「バーコード付購入案内」を郵送することにより、処理時間を短縮できた事例についてご説明をいただきました。
登壇者・参加者のみなさんとのオンラインセッション

最後に、ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者・参加者とのトークセッションが行われました。
宮古市の移住施策の中心は、「地元の高校生が進学や就職で地元を『離れる前』に宮古市のことを知ってもらい、それから外に出てもらうこと」だそうです。地元の企業や大人達を取材してもらい、「宮古市で働く、暮らすとは何か、どこが良いのか」を学んでもらいつつ、宮古市側も取材結果をPRのコンテンツとして使わせてもらうようにしているそうです。取材を受ける大人たちも、自分たちの仕事や地元の良さを再認識できる相乗効果がある、とのことでした。
「浄土ヶ浜エターナルグリーン」を使ったプロモーションによる、地域の変化についても話されました。一つの魚種や商品に限定したプロモーションだと、選ばれなかった側からの反対が生じる可能性がありますが、地域色は皆が肯定的に受け取ってくれたそうです。また、市民側からこの地域色を使わせてほしい、と内発的な動きが生まれたのは初めてだった、とのことでした。市役所でも、グッズや資料作りに統一性をもたせられている、と感じているそうです。
参加者からも沢山のコメントがありました。「積極的にデータ化する大切さを感じた」「活用事例が自分の活動のヒントになった」「非常に参考になりました」などの感想があり、盛況のうちにセッション終了となりました。
参考リンク
- • 中居 裕美 氏(岩手県宮古市 企画部企画課 地域創生交流推進室長)の資料はこちら
- • 丸田 之人 氏(地域情報化アドバイザー/北海道室蘭市 経済部緊急経済対策室 室長)の資料はこちら
- • 三陸宮古のいいイロプロモーションサイト
会議概要
- 日時:2023年2月14日(水) 19:30-21:30
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:50名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社