Fw:東北 Fan Meeting Vol.6 「地域の産業を再編する6次化の参入事情 ~食品加工に挑む電子部品メーカーを追う」

Fw:東北 Fan Meeting Vol.6 「地域の産業を再編する6次化の参入事情 ~食品加工に挑む電子部品メーカーを追う」


 我が国では、農林漁業(1次産業)活性化のために、加工業(2次産業)、流通・小売(3次産業)との一体的な推進を図る産業の6次化が叫ばれ、東日本大震災後の東北においても、農業などの復興を加速させる役割が期待されてきました。
 福島県では、精密機器の製造に従事してきた地元メーカーが、食品加工に乗り出す例が複数生まれています。福島県岩瀬郡天栄村に本社を構えるアルファ電子株式会社でも新規プロジェクトとして、福島県産米による米粉麺を「う米めん」として商品化。地域で高い評価を受けるに至っています。今回のFw:東北FanMeetingでは、アルファ電子株式会社で専務取締役を務める樽川千香子さんをゲストに迎え、福島の米への想いや、米粉麺に取り組んできた経緯、今後の展望などを伺いました。
 他地域からは、鹿児島県指宿市の電子部品メーカー、有限会社エール代表取締役の倉本哲さんをお招きしました。有限会社エールでは、鹿児島県が国内生産1位を誇り、指宿市が主要産地となっているオクラの加工品を生産。美容や健康に向けた商品として評価を得ています。
 工業製品を作っていた地域のメーカーが各地で6次化に挑むのは、どのような背景があるのか。彼らの存在は、1次産業活性化の担い手としてどのような可能性があるのか。ゲストのお二人のお話を伺いながら、参加者のみなさんと考えました。

樽川 千香子氏(アルファ電子株式会社 専務取締役)


 福島県岩瀬郡天栄村に本社を持つ「アルファ電子株式会社」は、受託製造業中心の業態からの脱却を目指していました。新事業の方向性として、これまで培ってきた「ものづくりサービス業」をベースに、「電子部品の受託製造」と「食・農業」を絡めた自社商品の開発を考え始めたそうです。
 樽川さんは、東日本大震災後、避難先の新潟県である企業経営者との出会いがありました。福島県へ帰還後に6次化参入企業を紹介され、新潟県で米粉の商品製造が始まりました。 
 2020年に「福島の米を使った日本一美味しい米粉麺を作りたい」との想いで福島県産米での米粉麺の開発をスタートします。2021年、工学院大学との産学連携による科学的根拠に基づいた美味い麺、「う米めん」が販売されました。
 今年、米粉麺専用工場が建設され自社製粉を行えるようになり、「既存事業と新規事業の融合体制が整ってきた」とのことでした。
 樽川さんは今後の展望として、地産地消の推進や「う米めん」ブランドの構築を挙げられました。他にも「生きくらげ」の生産や農福連携事業も進めているそうです。「これからも米粉麺の普及に尽力していきたい」とのことでした。

倉本 哲氏(有限会社エール 代表取締役)


 「有限会社エール」は鹿児島県指宿市で工業用センサーの受託製造と共に、地域の特産品の企画開発を行っています。鹿児島県はオクラの生産量日本一ですが、規格外品などで廃棄されるオクラが数百トンに及ぶなど、産地ゆえの課題がありました。「有限会社エール」は、オクラを包装するネットの製造事業をきっかけにオクラ生産者とつながり、オクラ加工品製造が始まったそうです。
 オクラの規格外品を活用した「オクラパウダー」や「とろ~りおくら茶」を自社のECサイト・道の駅・ふるさと納税・調剤薬局・生協などで販売展開していかれました。
 また地域資源の取組みとして、指宿市と鹿児島純心女子大学との産学官連携によりオクラの機能性の検証も行われました。
 さらに、美容・健康商品を展開する「OKRA BEAUTY PROJECT」を立ち上げました。アットコスメ」とコラボしたオクラマスクや化粧品などの販売が行われ、オクラのブランド化を進めているそうです。
 最後に倉本さんは、「地域の活性化を目指して、鹿児島県発のオクラの可能性を最大限に活かす「オクラ・テック」を今後も進めていきたい」とコメントしてくださいました。

トークセッション


 ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者とのトークセッションが行われました。
 「違う分野の事業を始める際、社内の理解は得られたのでしょうか」という質問が投げかけられました。両社共通して「既存のビジネスを変化させる必要性」や「新しいことをやらなければいけない」という危機感が社内にあったので、違和感なく受け入れられたそうです。
 「地元とのつながり」について、倉本さんは、地域の活動を通じて行政とのつながりができたそうです。生産者とつながりやすいローカルの強みが示唆されました。
 「新しいことを始める時の相談相手」について、樽川さんは、色々な人にアドバイスを聞いた結果、何をすればいいのかかえって迷った時期があったそうです。この経験から、自分にプラスになる意見、「自分の想い、目標、最初に感じた使命感」をまず大事にしよう、と考えたそうです。アドバイスを聞くのは良いけど「最後に決めるのは自分」であることについて活発な議論が展開されました。

登壇者と参加者との交流タイム

 登壇者と参加者の交流タイムでは、参加者から「本当に楽しかった」「非常に勉強になりました」「お二人が生き生きしていたのが印象的だった」などの感想が聞かれ、盛況のうちに会が終了しました。

参考資料


会議概要

  •  日時:2022年2月24日(木)19:30-21:30
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:37名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社