「~『新しい東北』に暮らす ~ 移住の魅力から描き出す震災10年後の東北とその先の未来」 イベントレポート
全国から多くの人々が被災地の復興・創生にかけつけました。やがて、通った地域に移り住んで活動を継続する人が現れ、地域にこれまではなかった新しい活動や事業が生まれました。また、そうした移住者の活動や受け入れた地域の人々によって築かれたコミュニティに惹かれ、さらに若い人たちが首都圏などから移り住む動きも見られるようになりました。
今回のFw:東北Fan Meetingでは、移住をテーマに取り上げました。移住がもたらす人や地域の変化のストーリーを知り、移住を果たした人たちから見た震災10年での東北の魅力や可能性を探りました。東北からは、岩手県陸前高田市に移住し、ご自身も移住のコーディネーターとして活躍する特定非営利活動法人高田暮舎の髙橋瞳さん、宮城県南三陸町へ移住し、ライターや研修コーディネーターとして活躍する一般社団法人南三陸研修センターの浅野拓也さんのお二人をお招きしました。
さらに、「社会や環境がよくなって、そしておもしろい」をテーマとした未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」の編集長、指出一正さんを交えて、東北への移住が持つ意味とそこから考えられる未来の姿を、参加者のみなさんと一緒に掘り下げました。
指出 一正氏(「ソトコト」編集長)インプットトーク
指出さんによると、東北は常に素敵な所で、新しくなるところも、ずっと皆が積み重ねてきたものもあって、人がかかわりそこに集まるという意味で魅力があるとのことでした。
東北が大好きな理由の一つとして、サクラマス、イワナ、タナゴがいる点を挙げておられました。魚から地域を紐説くという視点で社会を見ており、良いローカルは水循環のマネジメントがしっかりできているのだそうです。森と海を行き来するサクラマスが自由に生きているのは東北の河川がとても多く、地域の豊かさ・サスティナビリティを伝える時に、水や思いの循環からとらえると東北という場所が浮き上がってくるそうです。
東北のプロジェクトとしては、山形県小国町「白い森サスティナブルデザインスクール」、山形県金山町「カネヤマノジカンデザインスクール」監修、山形県置賜地域「ライク・ア・バードokitama」総合監修、福島県郡山市「こおりやま街の学校」の校長等の活動をしておられます。
観光以上移住未満の第三の人口である「関係人口」が地域に表れ、新しい関わりが増えていっているそうです。観光だけではない新しい地域振興が生まれています。例えば宮城県気仙沼市唐桑半島のペンターン女子をはじめ、社会に関わり、移住をすることの面白さ、大事さ、価値を伝える活動が行われています。
さらには、オンラインで関係人口化する「新関係人口」が始まっているそうです。たとえばクラウドファンディングの中で、その地域に行ったことのない人がクラフトビールを造るという形で地域に関わり、軽やかに経済を回し始めるという例があります。
移住する人の中には、被災地というだけでなく、今の東北に魅力を感じて移住する人が増えてきました。ローカルのデザイナーが東北を盛り上げている状況も見られます。例えば「Helvetica
Design」には魅力的なものが沢山あります。若い人が東北に元々あるものを新しい人に届けています。
また、流域関係人口という新傾向も見られるそうです。流域上のそれぞれにコミュニティが広がり、ゆるやかに連携が取られています。防災や共助の面でも効果的だそうです。
まとめとして、新しい東北のかたちのサスティナブルな視点として4つを挙げられていました。
1.関わりしろ。震災後10年で人がかかわる多様性が色々な場所で生まれている。
2.未来をつくっている手応え。中間支援NPOがキャリアを積んだ。
3.「自分ごと」として楽しい。誰かに任せるのではなく自分たちで楽しい場所や現象がある。
4.仲間の存在を知る。SDGsの最終的なところはパートナーシップ。
浅野 拓也氏(一般社団法人南三陸研修センター)インプットトーク
浅野さんは大学卒業直前に東日本大震災を経験され、社会人をやりながら東北でボランティア活動をしてこられました。生産者に寄り添う形で地域活動を行いたいと決意され、2014年2月のNPO法人ETIC「右腕プログラム」で南三陸へ移住されました。
現在は研修コーディネート、映像制作、ライター、デザインなどを仕事とし、南三陸VRツアーやYouTube等ウェブメディアで情報発信を行っておられます。少しのスキルでも貢献できる充実感が「地域のよさ」だと感じられているそうです。
南三陸の人達の「しなやかさ、たくましさ、力強さ」に惹かれて移住したので、「たのしい」「わくわく」できる地域である、ということを情報発信していきたいとのことでした。
髙橋 瞳氏(特定非営利活動法人高田暮舎)インプットトーク
髙橋さんはオンライン全国移住フェアに参加して東北地域に興味を持ち、陸前高田市の「地域おこし協力隊」の選考に応募して、移住してこられました。
現在は移住希望者の相談を受けたり、定住のフォロー活動をされたり、オンラインで現地案内をしておられます。人のつながりができやすい環境で、毎日が充実するようになったそうです。一人の人間として認識してもらえる喜びを味わっているそうです。
「移住者もまちも幸せになれる移住」を増やしたいと考え、良いところも大変なところも実体験で発信していきたいとの思いで活動をされています。移住には「安心感」や「わくわく感」が大事で、その人にあった提案が出来るようにしたいそうです。また、被災の経験を受け継ぎながらも被災以外のイメージを広めたいと考えておられます。
トークセッション
ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者とのトークセッションが行われました。
「地域の人との関係づくり」では、髙橋さんは「草刈りでご近所づきあい、お茶っこ文化、イベントでちょこちょこ顔を出す」ことで関係を作ってこられました。浅野さんは「フットサルに誘われたことがきっかけで地域の同世代とつながった。スポーツで打ち解けた」ことを話してくださいました。指出さんからは「人を認めてくれる地域に若い人が表れやすい。自分と同じ地平で認識してくれる」とのコメントを頂きました。
「移住後の仕事」については、浅野さんは「友達と仕事する、友達の困りごとを解決していく」ことで仕事を増やしてこられました。髙橋さんは「現在は、移住希望者が地域に合っているかどうかをしっかり考えて話ができるのが、以前していた仕事との大きな違いである」と述べておられました。指出さんは「ローカルの仕事の魅力は、いくつもの会社を通さずに直接伝統あるオーナーや先輩と話ができることだ」と指摘されていました。
登壇者と参加者との交流タイム
最後に登壇者と参加者との交流タイムも設けられ、盛況のうちに会が終了しました。
参考資料
- ソトコト編集長 指出 一正氏の資料は こちら
- 一般社団法人南三陸研修センター浅野 拓也氏の資料は こちら
- 特定非営利活動法人高田暮舎髙橋 瞳氏の資料は こちら
会議概要
- 日時:2021年9月27日(月)19:30-21:30
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:77名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社