Cheer Up! Project Vol.8富岡で拓け!花酵母スタートアップの未来~つつじ園26代目当主の挑戦開催

Cheer Up! Project Vol.8富岡で拓け!花酵母スタートアップの未来~つつじ園26代目当主の挑戦イベントレポート


福島県富岡町は、東日本大震災での津波と原子力発電所の事故により大きな打撃を受け、町内全域が警戒区域に指定されたのち、避難指示が地域ごとに徐々に解除されはじめ、現在では一部に帰宅困難地域を抱えながら、復興への道を歩んでいます。
 福島県須賀川市で室町時代から続いている大桑原つつじ園の26代目当主の渡邉優翔さんは、富岡の町の花でもあるツツジの再生プロジェクトに参画し、ツツジを通じて富岡の復興に関わるようになりました。そして、大学時代の仲間と富岡を訪れた際に、花から取り出す酵母である“花酵母”の存在を知り、大学生だった2022年に、富岡の地でIchido株式会社を立ち上げ、以来、花酵母を活かした商品づくりに挑戦しています。大学の研究者の力も得ながら、家業のつつじ園で培った感覚を活かし、本来は採取が難しいと言われている花酵母の生産に、独自の強みを発揮することができているそうです。
 現在、花酵母は主に清酒酵母として用いられますが、渡邉さんはアイスクリームなど食の分野でも活路を見出そうとしています。今後、この事業にどのような発展可能性があるのか。富岡町出身で地元の再生にも尽力しているNPO法人コースター代表の坂上英和さんを交え、みなさんと掘り下げました。 


挑戦者プレゼン
渡邉 優翔 氏(Ichido株式会社 代表取締役 / 有限会社大桑原つつじ園 26代目当主)

 渡邉さんは、花酵母を活かした商品づくりや造園業を行い、普段目に見えない業界の職人技や地域資源の新しい価値を創造することを目指しています。また、現場の物事を可視化し、アカデミックな視点でアプローチしています。
 「地域にある花で自分にしかできない復興」を目指した「富岡町ツツジ再生プロジェクト」は2020年にスタートしました。このプロジェクトは被災地復興と地域資源の再生を目的としています。これまでにゼロ株から1,000株以上に増やし、福島環境リブランディングキャンペーン「FUKUSHIMA NEXT」環境大臣賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
 渡邉さんは、「『世界を1°(一度)変える』、『富岡町を花溢れる場所にする』ことをビジョンとしています。地域資源の価値を再認識して、町民や訪問者にその美しさと誇りをお伝えしたい。また、富岡町で新しいチャレンジをする際に、後押しできる体制を整えたいと考えています。
 私は、花で街や人々を良い方向に変えられると信じています。地域に根付いてきた何気ない樹木や花々の持つ価値を理解し、地域の流れや環境を活かしながら、ものづくりを進める会社を目指しています」とコメントしてくださいました。


アドバイザーコメント
坂上 英和 氏(特定非営利活動法人コースター 代表理事)

 特定非営利活動法人コースター(costar)は、名前に3つの想いを込めています。
 (1)コップの下に置くコースター(coaster)のように、多くの人々の受け皿になれるような団体になる。
 (2)コースターのスペルを分解すると“co”と“star”になる。関わる人と「共に星になれる」、「共に輝ける」ような場をつくる。
 (3)コースターのスペルはcostarで意味は「共演する」。様々な人がつながっていけるような場を作る。
 コースターが手掛ける主な3つの事業、「コミュニティスペース『福島コトひらく』の運営」、「まちづくり支援」、「中間支援・人材育成」についても紹介してくださいました。
 さらに、富岡町の歴史や特徴、震災前後の富岡町の様子も説明され、富岡町は復興と再生の過程にあり、新しいチャレンジと共に美しい自然と豊かな文化を持つ地域であることが示されました。 


トークセッション

 ここから、登壇者と参加者、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)を交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。
 花酵母の活用法について参加者から、「コスメや香水」「ジュースやビネガー」「バームクーヘンなど小麦もの」、などのアイデアや、発酵を楽しむコミュニティや組織を作って繋がりを広げてみるのはどうか、といった多くの提案やコメントがありました。
 渡邉さんは最後に、「皆さんが、私が想像していなかった花酵母の可能性を見出してくれて嬉しく思います。発酵という技術が実は花と繋がっているという事実は、新しい花の可能性を皆さんと共に作り上げていけるのではないかと感じています。私も地域に根付いた会社を作っていきたいと考えていますので、もしお知り合いに同じようなことをやってみたい方がいれば、ぜひお声がけいただけると嬉しいです」と話してくださいました。
 今回のセッションを通して、花酵母の新たな可能性が示され、盛況のうちにトークセッションは終了となりました。


参考リンク


会議概要

  •  日時:2025年1月27日(金) 19:30-21:30
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:41名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社