Cheer Up! ProjectVol.5気仙沼発:地域ぐるみの中高生の探究学習モデルを考える~まるオフィスの教育活動と事業成長への挑戦 開催

Cheer Up! ProjectVol.5気仙沼発:地域ぐるみの中高生の探究学習モデルを考える~まるオフィスの教育活動と事業成長への挑戦 イベントレポート


 宮城県気仙沼から教育×まちづくりで活動を展開する一般社団法人まるオフィスは、東日本大震災からの復興活動を契機に気仙沼へ移住した若者と地元の若者により設立され、「地元の課題を学びに変える」をミッションに、中高生のチャレンジを応援する教育事業を手がけています。
 まるオフィス代表理事の加藤拓馬さんは、東日本大震災を機に宮城県気仙沼市へ新卒、無職で移住をし、復興支援に従事したのち、2015年にまるオフィスの活動を立ち上げました。多くの若い人々が、まるオフィスの活動で成長の機会をつかんできた一方で、彼らが手掛ける地域ぐるみでの中高生への探求活動を支えていくには、地域の理解をさらに深め、事業として継続できる仕組みづくりが、より一層必要となっています。
 今回のFw:東北 Fan Meetingでは、まるオフィスが生み出した中高生の探究学習の実例を漫画として伝えていく「中高生の問いストーリー」を題材に、加藤さんが描く教育×まちづくりの活動を、継続性のある事業として成長させていくための道筋を、参加者のみなさんと考えました。
 アドバイザー役には、秋田県五城目町でまちづくりでの実験的な取組を数多く実践し、子どもたちや若い世代の学びの場づくりも支えてきたハバタク株式会社の丑田俊輔さんを迎えました。


挑戦者プレゼン
加藤 拓馬 氏(一般社団法人まるオフィス 代表理事)

 加藤さんの出身は兵庫県です。東日本大震災の復興支援をきっかけに気仙沼に移住し、13年半にわたり活動してきました。現在、気仙沼の中学生・高校生のコーディネーターとして、教育や探究的な学びに取り組んでいます。
 加藤さんは、「探究的な学びは自分ごとができる課題設定が大事で、地方都市は課題設定に向いていると感じています。プロジェクト型学習と探究的な学びの違いについてよく聞かれますが、探究的な学びの中にプロジェクト学習があるというイメージです。最終的には生き方を自己決定できる人や無目的に学べる人が育まれるといいなと思っています。気仙沼の復興を出発点に、持続可能な地域を日本中に生み出すことにも関心があります。今日はその手段として、お金を稼ぎながらどういうことができるかを話したいです」とコメントしてくださいました。
 一般社団法人まるオフィスは2022年に、「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」を市と共に立ち上げました。事務局のサポートを受託し、地元企業での夏季学習や東京での展示会参加を通じて学びを深める活動をしています。
 「気仙沼の高校生マイプロジェクトアワード」発表会や中学生の探求学習や小学生の「放課後たんけん」を行い、地域のナビゲート機能を提供する「移住・定住支援センターMINATO」の運営もしています。
 日本中の中高生のリテラシーを上げるため、中高生のプロジェクトを漫画化する「中高生の問いストーリー」も発信中です。具体的なプロジェクトを漫画にすることで、探求学習の魅力を伝えやすくしています。
 加藤さんは、「これらの活動を通じて、持続可能でワクワクする学びの場を目指しています。『気仙沼モデル』を実現し、日本中の中高生がプロジェクトを起こして夢中になる経験を提供したいです」と話してくださいました。


アドバイザーコメント
丑田 俊輔 氏(ハバタク株式会社 代表取締役)

 丑田さんは、秋田県の五城目町という人口約8,000人の中山間地域に住んでおり、十年前に秋田に移住して東京と秋田の二拠点居住を続けています。ハバタク株式会社を2010年に設立し、新しい学びの環境を学校や地域に提供するプロジェクトを国内外で展開中です。また、グループ会社の「タクトピア株式会社」では全国の中学、高校、大学生に探求型学習プログラムを提供し、世界を学び場とする機会を創出しています。
 丑田さんは、秋田では渓流釣りやワカサギ釣りを楽しみ、自然の中での活動を学びの一環として大切にしているとのこと。地元の活性化にも取り組んでおり、商店街の空き家を改修した遊び場づくりや、高校生や地域住民の参加による地元温泉の再生、里山の森林を活かした集合住宅建築プロジェクトにも力を入れています。「こうした活動を通じて、地元の資源を活用しながら持続可能な地域づくりを目指しています」と話してくださいました。
 一つの大きなプロジェクトとして、地元小学校の建て替えがありました。地域住民と共にワークショップを行い、子どもから大人までが学べる学校を目指したそうです。さらに、地域と学校の壁を越えた学びの場を提供し、県外からの教育留学や教育移住をサポートしています。
 プログラムベースの取り組みとして、「五城目で世界一周」授業も紹介されました。国際教養大学の学生達と連携し、留学生が自分の地域についてプレゼンテーションを行い、子どもたちは町を探求しながら英語で発表します。また、街の若者が世界に出ていく際の旅費を補助する「五城目から世界一周」という取り組みも今年から展開されています。


トークセッション

 ここから、登壇者と参加者、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)を交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。
 丑田さんのプロジェクトについて、資金調達の方法がどうなっているのか質問がありました。丑田さんはプロジェクトごとにビジネスモデルとファイナンスを発明し、働く人の適正な報酬をはじめお金としっかり向き合っていくこと、スタートアップ・ローカル経済・ボランティアなど最適な経済圏を選択すること、自分の得意不得意を開示しながら適切な人に委ねていくことで自律的なチームをつくっていく方法など、具体例を交えて紹介してくださいました。
 漫画プロジェクトの可能性についても、海外展開の可能性や漫画業界のビジネスモデルから学べる点、有名な漫画家や行政・企業と連携してプロジェクトを広げる方法など、様々なアイデアが交換されました。さらに、大人たちも探求心を持ち、次世代と共に学び、遊ぶ必要性や、ロジックモデルの重要性についても活発な議論が展開されました。
 参加者から沢山のアイデアやコメントもあり、盛況のうちにトークセッションは終了となりました。


参考リンク


会議概要

  •  日時:2024年10月24日(木) 20:00-22:00
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:47名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社