Cheer Up! ProjectVol.4バスツアーで実現!生産者・シェフ・消費者で共有する福島の食の魅力とは?~孫の手トラベル「フードキャンプ」ツアーの明日を考える 開催

Cheer Up! ProjectVol.4バスツアーで実現!生産者・シェフ・消費者で共有する福島の食の魅力とは?~孫の手トラベル「フードキャンプ」ツアーの明日を考える イベントレポート


 福島県郡山市で「フードキャンプ」のツアーを展開する孫の手トラベルは、福島の食の魅力を発掘し、生産者も消費者も喜ぶ地産地消の新しいツアーとして「フードキャンプ」を展開しています。
 株式会社孫の手の山口松之進さんは、山口タクシーグループとして、高齢者や移動困難者の利用を視野に、福島県内で先駆けて介護タクシーを導入。孫の手トラベルのツアーは、移動が困難な高齢者でも楽しみのための外出が楽しめるタクシーの送迎付きのツアーとして立ち上がり、好評を博していました。
 しかし、東日本大震災後、風評で困難を抱える生産者の姿が目に留まり、福島の魅力、福島の誇りである思いがこもった食材の魅力を多くの人に伝えるべく、フードキャンプツアーを開催するに至ります。
 70回以上開催で延べ1,600人以上が参加したフードキャンプを通じて、多数の人々が「おいしい・楽しい」を入口に、福島の今と未来を体感する機会を得ることができました。県内59市町村へ開催を拡げ、各地にいる一流の生産者とシェフを地元の誇りとして自慢する風土づくりを進めるために、山口さんは次の一手、二手を目指し続けます。
 今回のFw:東北FanMeetingでは、山口さんの想いをもとに、孫の手トラベルの活動にどのような展開が望まれるのかを、株式会社インアウトバウンド東北の西谷氏も交え、参加者のみなさんと考えました。 


挑戦者プレゼン
山口 松之進 氏(郡山観光交通株式会社 代表取締役)

 フードキャンプは、畑にキッチンカーを持ち込み、テーブルや椅子を設置してアウトドアレストランを作ります。畑におめかしをし、テーブルセッティングを行うことで、日常の畑が特別な場所に変わります。食事前には生産者の思いを感じるためのプログラムを実施し、その後、収穫体験などを通して参加者に農家の仕事への理解を深めてもらいます。
 食事は生産者と一緒に食卓を囲み、畑で話した内容をテーブルでも共有します。シェフもテーブルを回り参加者と交流します。地元の参加者と県外の参加者が交流することで、地域の魅力を再発見し、シビックプライドが醸成され、生産者も自分の野菜が喜ばれる姿を見て、農業の意義を再認識できます。シェフも良い素材があってこそ良い料理ができることを再確認し、新鮮な気持ちで料理に取り組んでいる、とのことでした。
 フードキャンプは結婚式や外国人向けのモニターツアーなどにも活用され、地域のストーリーを伝える工夫をしています。2019年には環境省が主催する「グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞」を受賞し、新しい視点で生産者のサイクルを伝える取り組みが評価されました。フードキャンプを通じて、地域の思いや潜在価値を伝え、共感する仲間を増やすことで、価値を広げています。旅行業界でよく言われる「モノからコトへ」を実践し、アイデンティティを伝える事業として評価されています。
 フードキャンプの原点について、郡山市には「ブランド野菜教育会」という、地元にブランドを作ろうと頑張っている生産者がいます。震災後、放射能の影響をどう管理するかなど、農家は科学的な知識を持って作物を育てていますが、山口さんは、そうした話を聞きながら畑で食べるトウモロコシやナスの美味しさに感動し、その感動を多くの人に体験してもらいたいという思いからフードキャンプが始まりました。
 山口さんは、「震災前から『6次化』という言葉があり、生産者が生産物に付加価値をつけて売ることが求められていましたが、私は生産者の価値を伝える手段としてフードキャンプを考えました。生産者をヒーローにすることがテーマです。地元の価値を再発見し、地元が盛り上がることで、外の人が気になって覗きたくなる。それが真理なんじゃないかなと思っております。福島から始まる『おいしい革命』を目指し、フードキャンプはスタートしました。フードキャンプは、自然の恵みを感じ取ることによって価値観を見直し、日常の中で新たな発見をし、社会課題を自分ごととして捉えるきっかけとなっていただきたいと思います。原発事故を抱えた福島だからこそ提供できる価値があり、福島から始まることに必然性があると感じています」と話してくださいました。


アドバイザーコメント
西谷 雷佐 氏(株式会社インアウトバウンド東北 代表取締役)

 西谷さんは山口さんのプレゼンについて、「観光において『食』は鉄板の要素であり、ストーリーや個性を求められる中で、その全てが凝縮されていると感じました。
 まず、体験と食の接続性があります。『テーブルトゥファーム』『ファームトゥテーブル』という双方向性の話も出てきましたし、東日本大震災以降に野菜の美味しさを伝えたい生産者をヒーローにする、というキーワードもしっかり据えられていて物語があります。生産者やシェフの個性も生きていて、生産者の直売や直送依頼にもつながっています。何よりも単発イベントではなく、継続して実施していることでリピーターの接続にもつながっています。地域再発見、地元の方の良い消費やシビックプライドの形成にもつながっています。非の打ち所がないな、と思いながら聞いていました。
 さらなる発展を考えるならば、環境保全や持続可能な農業への貢献といった社会貢献のエッセンスを加えることが考えられます。例えば、ツアー参加費の一部が若手農家の育成や教育につながるといった貢献的な要素がブランド力を強める可能性があります。
 他の地域での展開についても、福島や東北の他県においてもノウハウとブランディング力を活かして展開することができると思います。東北6県でフードキャンプを横展開し、どこに行ってもフードキャンプを楽しめるようにすることも可能性があると思います。地域再発見が優先であるというコメントもありましたが、その上でインバウンド観光という視点では、どの町も人口減少が進む中で財源をどう確保するかが課題です。外貨を獲得するためにインバウンド観光を展開し、特に福島は東京から近いので、今後よりスケールさせるために展開していくことが考えられます。特に環境保全や持続可能性という点で今の展開をブランド化することは、海外だけでなく国内展開でもブランド力を高めるのではないかと感じました」とコメントしてくださいました。 


トークセッション

 ここから、登壇者と参加者、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)を交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。
 「社会課題解決や子どもへのドネーションについて」「タクシー会社としての強みを活かした新しいツアー展開」「介護タクシーとユニバーサルツーリズム義務化について」など活発な議論が行われました。
 西谷さんは、今後の展開とアイデアの例として、滞在時間を延ばす工夫が取り入れた宿泊型の酒蔵見学ツアーや、畑でキャンプやファッションショーを行うなど、エンタメ要素を盛り込んで農業を楽しく体験するアフロコーンツアーを紹介してくださいました。
 西谷さんは、「特別で本物の体験が重要です。私は、『今だけ、ここだけ、あなただけ』というコンセプトを大切にしていますが、野菜やシェフ、自然など、既存のものを組み合わせて価値を生み出す編集力が山口さんの素晴らしいところだと思います」とコメントしてくださいました。
 最後に山口さんは、「『百聞は一見に如かず』ということで、ぜひフードキャンプにご参加いただければと思います。参加した上で、今日のような話をまたご一緒にできると、もっと深い話ができるのではないかと思いますし、私たちはそれを商品にしたいと考えています。現在、フードキャンプはある程度の形ができましたが、次のステップに進もうとしている段階です。ぜひ皆さんと一緒にいろいろなアイデアを出し合えればと思います」と話してくださいました。
 今回のセッションでは、参加者から沢山の質問やアイデアがあり、盛況のうちにトークセッションは終了となりました。


参考リンク


会議概要

  •  日時:2024年10月2日(水) 19:30-21:30
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:38名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社