Cheer Up! ProjectVol.3働きたい女性のためのワークシェアと働き方改革 ~ケイリーパートナーズが仕掛ける「1日2時間から働ける社会」とは イベントレポート
福島県郡山市にある株式会社ケイリーパートナーズでは、子育て中の女性が1日2時間から働けるワークシェアのサービスを手掛けています。それぞれの年代の女性で働いている人たちの比率を出すと、20代前半や40代では就業している人の割合が高いものの、出産から子育てに向かう20代後半から30代後半で大きく凹んでしまうと言われています。一方で、地域の企業では人手不足が叫ばれています。フルタイムで働く人だけでは、地域の仕事を維持するのが難しいと言われているのも課題です。こうした問題に、働く意欲はあるが、フルタイムの働き方は望まないという子育て中の女性たちに、地域の企業の仕事を担ってもらう仕組みを作っているのが、ケイリーパートナーズの挑戦です。
郡山市出身の代表取締役COOの鷲谷恭子さんは、東京で就職したのち、結婚、出産を機に専業主婦へ転じて郡山市へUターンを果たし、東日本大震災を経験します。震災後、多数のボランティア活動を経て、子育てをする女性も自由に働ける環境をつくることを目指して、ケイリーパートナーズを起業するに至りました。今回は、鷲谷さんをゲストにお迎えして、この課題の解消に向けてどのような取組を行っているのか、また、個々の問題に対して私たちがどのような意識を持ち、行動できたらよいのかを、高知大学地域協働学部准教授の須藤順さんも交えて、みなさんとディスカッションしました。
挑戦者プレゼン
鷲谷 恭子 氏(株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役COO)

「株式会社ケイリーパートナーズ」は2019年に設立されました。自由度の高い勤務体系を実践しながら、チーム型のアウトソーシングサービスを展開しています。メンバーの9割は中学生以下のお子さんがいるママたちで、子連れ出勤制度などを用いて活躍しています。
業務内容として、「企業の外付けサポートチームとして、痒いところに手が届き、実際に手を動かしながら、しっかりと寄り添えるサービス」を展開する「ささえる事業」と、「誰もが調和のとれた働き方で社会とつながる未来」に向けて多様な働き方を拡げるための啓蒙、就労支援を行う「ひろげる事業」が紹介されました。
ワークシェアの取り組みも説明してくださいました。「幸せに働き続けられる」人を増やすために、
1 健康 健やかな心と身体で
2 人間関係 良好な人間関係の中で
3 自己決定 働き方を自分で決められる
環境を徹底して作ることを目指してスタートしたそうです。
鷲谷さんは、「弊社は2時間から働ける環境を提供していますが、これはあくまでシンボリックな表現であり、幸せに働き続けながら暮らせる社会を目指しています。人生の様々なステージにおいて、自分に合った働き方を選び取ることが、豊かで幸せな暮らしを築くために不可欠だと考えています。多くの方が一歩を踏み出せる2時間という選択肢を提供し、子育て中の女性だけでなく、アクティブシニアや自分のライフスタイルを大事にする若い方など、ワークシェアの仕組みを通じて、新たな労働参加の機会を作っていけたらと思っています。」と話してくださいました。
アドバイザーコメント
須藤 順 氏(高知大学 地域協働学部 准教授)

須藤さんは、ソーシャルイノベーションの観点から4つの論点を話してくださいました。
1 「わたし」を主語に動きながら事業をクラフティングする
2 自分たちなりのインサイトを見つけ出す
3 複数の課題を同時に解決する
4 ソーシャル・インパクトの広げ方
須藤さんは、「我々が事業創造や社会課題を解決していくときに、事業化やスケールさせてシステムや社会を変えることなどに目がいきがちですが、 重要なのは自分たちがどういう問題を解こうとしているのか、実効性が本当にあるのかを確認して、小さく短い時間で何度も試行錯誤することが大切だと思います。 鷲谷さん達のように、子育てしているお母さんたちや中小企業の声を丁寧に聞いて、柔軟に形を変えていく仕組み作りは大事だと思いました。
子育てをしているお母さんたちは、子どもという一つの共通点を軸に対等な立場で話していく、というトレーニングを日々行ってます。社会課題解決や協力関係を紡ぐ時には極めて有効な行動様式やマインドセットを持っているのではないかと感じたので、女性の感性・価値観・行動様式をより前面に押し出すような、
場作りやプラットフォームの構築が大切だと思いました」と語ってくださいました。
トークセッション

ここから、登壇者と参加者、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)を交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。
これまでの発注側からのワークシェアリングではなく、働く側の時間と体をいかにシェアしていくか、という「ワークシェアに対する新しい考え方」や、「日本の労働価値観の変化」についてなど、活発な議論が展開されました。
参加者から、「様々な働き方が出来る事例として素晴らしい取り組みだと感じました」「仕事も家事も性別も関係なくワークシェアできる世の中に向かっている実感が湧きました」「ケイリーパートナーズさんのような企業が身近にあればなぁ、と思います」といった沢山の感想コメントがあり、盛況のうちにトークセッションは終了となりました。
参考リンク
会議概要
- 日時:2024年8月29日(木) 20:00-22:00
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:40名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社