Cheer Up! ProjectVol.2「もうひとつの一本松」の木材活用で伝える未来への希望 ~岩泉フォレストマーケティング×KUMINO(R)で描く積木プロジェクト 開催

Cheer Up! ProjectVol.2「もうひとつの一本松」の木材活用で伝える未来への希望 ~岩泉フォレストマーケティング×KUMINO(R)で描く積木プロジェクト イベントレポート


 岩手県岩泉町にある岩泉フォレストマーケティングでは、国際的な森林認証制度である「FSC(R)森林認証」を受けた豊富な森林資源の活用を手がけています。その活用のひとつとして、滋賀県東近江市のクミノ工房(当時)が生み出した日本発の積木・KUMINO(R)との連携を進めてきました。
 世界中の子どもたちが遊べるKUMINO(R)に、岩泉の木材を活用することで、産地や樹木への興味関心を高め、都市に住む子どもたちにも、森林環境について知る機会を提供することができます。
 この取組を進める中、岩泉町では、東日本大震災をはじめ台風災害にも耐えた一本松が、先日、ついに倒れてしまいました。地域から愛され、地域を勇気づけてきた一本松を、このまま朽ちさせることはできないと思い立った岩泉フォレストマーケティングの松永充信さんは、この一本松をKUMINO(R)にすることで、地域や防災について知ってもらうおうと思い立ち、クラウドファンディングを立ち上げました。
 これらの取組から松永さんが描く岩泉の森林資源の未来とは、どのようなものでしょうか。株式会社KUMINO代表取締役の井上慎也さんも交え、みなさんと考えました。


挑戦者プレゼン
松永 充信 氏(株式会社 岩泉フォレストマーケティング ステージマネージャー)

 松永さんは越谷出身で、2016年に岩泉町に復興支援員として移住しました。移住から4ヶ月後に台風10号が発生、岩泉町では被害総額が東日本大震災の10倍となるほど甚大でした。こうした経験をきっかけに、松永さんは消防団に入団し、防災士の資格も所得するなど、防災の意識が高まったそうです。
 「奇跡の一本松」というと、陸前高田市のものが広く知られていますが、岩泉町にも、震災や津波、台風に耐えた「未来につなぐ希望の松」と名付けられた「もうひとつの一本松」がありました。ですが、今年の2月にこの一本松は残念ながら倒れてしまいました。そこで松永さんは、「地域の記憶と想いを未来につなげたい」との思いで企画書を書き、多くの災害を乗り越えた一本松をKUMINO(R)の積木として活用するために、クラウドファンディングを立ち上げることにしました。
 松永さんが所属しているのは「岩泉フォレストマーケティング」という会社で、2017年に設立されました。豊富な天然林とFSCc(R)森林認証を活用して、新たな価値を創造することを目指しています。現在、木工品・教材の販売や出前授業を行っています。
 松永さんは、「私の思いとして二つの言葉があります。一つは『山ある限り人いる限り』という岩泉町のとある事業者さんの言葉です。岩泉町の93パーセントの山があるからこそ我々が存在でき、その人々がいるからこそ自分たちが成り立つという考え方です。もう一つは“Make a Difference”という言葉です。これは、影響を与えるという意味ですが、私はそれを『小さなきっかけを与える』と解釈しています。震災や災害のきっかけ、人との出会い、プロダクトの出会いなど、さまざまなきっかけを大切にしていきたいと思っています。クラウドファンディングは、2024年9月14日まで行われています。ぜひ100パーセント達成のためにご支援いただければと思っています」と話してくださいました。


アドバイザーコメント
井上 慎也 氏(株式会社KUMINO 代表取締役)

 株式会社KUMINOは2016年から活動を始めて現在は9年目です。滋賀県東近江市に工房を構え、地域の森や里を考えながら仕事をしています。
 井上さんは、大学で森林生態学という分野に出会い、森に入った時に感じた自由さや、地域の山の自然を利用することの大切さを学ばれました。その後、システム会社に就職し、システムエンジニアとして10年間働きながらも、「いつか森に関わる仕事をしたい」という思いがあったそうです。子育てをしながら、おもちゃの勉強や、おもちゃコンサルタント養成講座を受ける中で、積木に強く惹かれる自分に気づき、KUMINO(R)が生まれました。
 KUMINO(R)のモチーフは木組みの木造建築で、大工の技術から構想されました。この形は構造的に意味があり、刻まれた2つの溝が力を伝え合います。ただ積むだけではなく多次元的な構造的体験ができます。みんなで力を合わせる、場作りをする遊び方も紹介されました。
 井上さんは、「私たちは、地域材でKUMINO(R)を作り、それを広げていきたいと考えています。松永さんとの出会いがきっかけとなり、『森と人をつなぐカタチ』というキャッチコピーで始めました。森林の生態学を学んだ結果、人の関わりがあることが重要だと思ったからです。また、KUMINO(R)に刻印を施し、スマートフォンでスキャンして情報を伝えるKUMINO Scanアプリが最近形になり、提供を始めています。岩泉のクラウドファンディングが成功するように盛り上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします」と語ってくださいました。


トークセッション

 ここから、登壇者と参加者、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)を交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。
 KUMINO(R)は、さまざまな形に組み立てることができる木製のブロックです。飛行機やトナカイなど、様々な形が紹介されました。KUMINO(R)はこれまでに135種もの木の種類で製作され、それぞれの木の特性が活かされています。今回のクラウドファンディングでは、材料として特別な一本松である岩泉町の「未来につなぐ希望の松」が用いられました。
 また、岩泉フォレストマーケティングで製作されるKUMINO(R)ではFSC(R)認証マークがついていることも特徴です(※一本松は認証材ではありません)。FSC(R)森林認証は森林が適切に管理されていることを示す国際認証で、森林の管理だけでなく、加工プロセスもチェックされ、認証を受けている材と認証を受けていない材が適切に分別管理されていることも確認されます。
 KUMINO(R)では、教育分野、贈り物、法人向けの販売、高齢者向け施設への導入など、幅広い用途が考えられます。
 今回のセッションを通して、KUMINO(R)が単なるおもちゃ以上の価値を持つ魅力的な製品であり、これからも様々な場所で使用され、多くの人々に楽しんでもらえる可能性が示されました。参加者から沢山の質問やコメントもあり、盛況のうちにトークセッションは終了となりました。


参考リンク


会議概要

  •  日時:2024年7月29日(木) 19:30-21:30
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:33名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社