東北暮らし発見塾 テーマ編:地域おこし協力隊 〜地域おこし協力隊が生み出す未来への実践(久慈市・洋野町・利府町) 開催 イベントレポート
東北への移住をテーマとした「東北暮らし発見塾」のテーマ別開催として「地域おこし協力隊」を取り上げ、移住コーディネーターや有識者を交えてディスカッションを行いました。
地域おこし協力隊の制度を使って移住先で新しいチャレンジに踏み出す人たちが、岩手県、宮城県の沿岸部でも多くいらっしゃいます。地域課題の解決に貢献する一方で、その活動を自らの生業として、移住者として地域に根付いていく人たちは、具体的にどのような挑戦や実践をしているのでしょうか。また、これから地域おこし協力隊として沿岸部で活動を始める人たちに寄せられる期待とは、どのようなものでしょうか。
岩手県久慈市、洋野町、そして宮城県利府町の3つの地域からゲストを迎え、各地で行われている地域おこし協力隊の活動や、隊員の人たちの挑戦、実践を知ることで、沿岸部への移住の手段として地域おこし協力隊の道を選ぶことの魅力や可能性を、参加者のみなさんと考えました。
また、「社会や環境がよくなって、そしておもしろい」をテーマとした未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」との連動企画として、同誌の指出編集長を迎え、地域おこし協力隊での移住をリアルに掘り下げました。
トークセッション
大原 圭太郎 氏(一般社団法人fumoto 代表理事)
大原さんは宮城県仙台市出身。2016年10月から洋野町最初の「地域おこし協力隊」として観光事業に従事されました。「地域おこし協力隊」の課題として、小さな町だと行政が担う負担が大きいこと、任期3年では次の道筋を作ることが難しいことを感じたそうです。
その後、大原さんは、民間で協力隊を受け入れる仕組みがあることを知り、任期終了後の2019年に「洋野町でチャレンジする人の土台になれれば」という思いで「一般社団法人fumoto」を立ち上げます。
「一般社団法人fumoto」では、協力隊の募集や活動支援を行っています。協力隊希望者のやりたいことを尊重し、活動しやすい環境を整えることを心がけているそうです。
「ひろのの栞」というウェブメディアを用いて洋野町で活動する方の思いや経緯を紹介する活動支援も行っています。最後に大原さんは、「協力隊に興味がある方がいたら是非ご相談ください」とコメントしてくださいました。
藤織 ジュン さん (久慈市 移住コーディネーター)
東京生まれの藤織さんは、2016年に久慈市が募集していた「住み込みで3ヶ月間、海女をしながら観光をPRする仕事」に応募し、採用されました。海女や観光PRの仕事を行ううちに久慈市の人や食べ物に魅了されていったそうです。任期満了後に今度は「地域おこし協力隊」として海女と観光の仕事を継続して行われました。
「地域おこし協力隊」の活動後も「久慈市に住む方が自分のやりたいことをやれる」と思い、2018年「合同会社プロダクション未知カンパニー」を創業。現在も観光PRの仕事を続け、2022年8月からは久慈市移住コーディネーターとしても活動されています。
藤織さんは、「ZOOM、メール、LINEでも相談できますし、住まい探しもお手伝いします。採用までの期間も活動中もお節介を沢山いたしますので、気になる方はお気軽にご相談いただければと思います」と話してくださいました。
櫻井 貴徳 さん (利府町経済産業部 商工観光課 シティセールス係)
利府町は、日本三景・松島の一角をなす表松島の海があります。自然豊かですが、東北最大のイオンモールなど商業施設も充実しており、大東建託株式会社による「いい部屋ネット街の幸福度&住み続けたい街ランキング2022宮城県版」で「住み続けたい街」第2位にランクインしました。
公道レース「利府ラリー」「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge in 利府」など、スポーツイベントも力を入れています。利府町の街づくりのテーマは「共にチャレンジするまち」で利府町を拠点に若いエネルギーを持った人材が集まり、商品開発やマルシェなど様々な活動が活発に行われている状況だそうです。
利府町の地域おこし協力隊が行っている、「サウナプロジェクト」「農業支援プロジェクト」「イベント55プロジェクト」「スポーツプロジェクト」「ブランディングプロジェクト」など沢山の企画が紹介されました。
近江 貴之 さん (利府おもて梨園代表/梨農家兼梨王子)
仙台市出身の近江さんは、「新卒からずっと通信業界にいましたが、自分自身で裁量権を持ってものづくりをしたい、という思いが強くなり2019年7月から利府町の地域おこし協力隊制度を活用し、梨作りや利府梨カレーなどの開発や加工を行ってきました」と話してくださいました。
利府町の梨は140年以上の歴史がありますが、現在は梨農家が減っています。近江さんは、「利府町の地域おこし協力隊第1号として、脱サラして梨農家になった人間として、『梨農家は稼げるし、楽しいし、格好良いもの』ということを伝えるため、メディアも活用しながら情報発信を行っています」と思いを語ってくださいました。
トークセッション
ここから、登壇者と参加者、SDGsマガジン「ソトコト」編集長の指出一正さん、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)も交えて、トークセッションが行われました。
「ローカルコミュニケーター」について、提唱者の大原さんは、「コーディネーターという言葉が一般的ですが、自分たちは、地域の人と密にやり取りをしたり、逆に地域の人を誰かに紹介したり、間に入るような役割や立場なので、コミュニケーターの方がお互いにやり取りをするっていうニュアンスが少し強まるかな、と思いました」と語ってくださいました。
「地域おこし協力隊の任期3年」について、登壇者の皆さん「3年はあっという間」だったそうです。指出さんは、「任期後も1,2年くらいメンターに学ぶとか、夜間学校で教えてもらうなど、補講のようなサポートがあるとより良いのではないか」と指摘されました。久慈市は最初の企画書の段階から、将来どう生計を立てていけるかを一緒に考えるそうです。利府町では、地域おこし協力隊をしながら申請して副業を行える制度があり、近江さんは、その制度を活用して規格外梨を使用した利府梨カレーを商品開発されました。
指出さんは「藤織さん、大原さん、近江さん、協力隊としてとても素敵な経験をされた方たちがそれぞれの町で活躍されており、大変参考になる方が多いと思います」とコメント。興味深いステップアップを行ってきた移住者の皆さんとの活発なトークセッションは終了となりました。
参加者同士のブレイクアウトセッション
移住者と参加者の皆さんが一緒にいくつかのブレイクアウトルームに分かれ、「移住」や「暮らし」「地域おこし協力隊について」の活発な意見交換が行われました。
「移住するフットワークの軽さがすごい」「実際に行ってみたい」「梨、食べたいです」などの感想もあり、盛況のうちにセッション終了となりました。
参考リンク
- • 久慈市公式移住支援サイト「KUJIターン」
- • 合同会社プロダクション未知カンパニー
- • 洋野町移住定住推進サイト「ここ住むひろの」
- • 「ひろのの栞」
- • 利府町シティセールス係 移住支援
- • 利府おもて梨園
会議概要
- 日時:2024年1月22日(月) 19:00-21:00
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加人数:35名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社