Fw:東北 Fan Meeting 2023 東北暮らし発見塾(野田校)〜食・農×移住で拓く村の魅力づくり イベントレポート
東北への移住をテーマとした「東北暮らし発見塾」、今回は「野田校」として、岩手県野田村を取り上げ、村長や移住者の話が聞けるオンラインイベントを開催しました。
岩手県の北東部沿岸に位置する人口約4千人の野田村は、「荒海ホタテ」やワカメなどの海産物や、岩手県が生産量日本一を誇る山ぶどうの産地としても県内屈指の存在であるほか、歴史ある伝統的な製法による「のだ塩」も特産のひとつに数えられ、そうした豊かな資源なども背景に、産業振興による新たな魅力づくりにも熱心な地域です。本イベントは、小田 祐士村長が、地域の魅力について参加者のみなさんへ直接語りかけるほか、移住者たちの実体験に基づく生の声などを聞きだしながら、参加者のみなさん同士とも語り合える場となりました。
ゲストには、関東からの移住で山葡萄農園Lu.cultiver(ル・カルティヴァ)で就農した山口光司さん、イタリアンの料理人としてのキャリアを積んだのちにUターンしたOsteria Vai-getsu(おすてりあ
ばいげつ)オーナーシェフの安藤智子さん、そして今年新たに地域おこし協力隊として就労継続支援B型六花に勤務し、六花が運営するカフェRokkaのスタッフとしても活動を始めた外舘崚さんを迎え、移住先での生業や暮らし、そして彼らが見つけた野田村の魅力について掘り下げました。
(1)小田村長による地域の魅力・取り組み紹介
小田 祐士 氏(野田村 村長)

小田村長は野田村について、「野田村は人口4千人の小さな村ですが、海あり、山あり、川ありの、自然に恵まれた、お酒に合う食べ物が多い村です。とくに、普通は控えめに話しますけれども、ホタテは日本一おいしいと自負できるものだと思っています。海水を汲み、山の木で火を焚き蒸発させて作る『のだ塩』もあります。また、震災後、様々な交流を行っています。道路や下水道の整備も進んでいて文化的な生活ができています」とのことでした。
「心はいつものだ村民」事業も紹介されました。震災以降、野田村に思いを持っている人、繋がってみたい人がバーチャル村民として登録できる制度で、現在1,300人ほどの登録があるそうです。
小田村長は、「毎週のように登録が増えていて非常に嬉しく思っています。地域おこし協力隊でも若い方が入ってきて非常に大きな力です。地元のじいちゃん、ばあちゃんからすると、若い孫がいっぱい来た、と感じているようです。こうした方々との繋がりを含めて、皆で頑張っていければ、と思っております」と話してくださいました。
(2)移住経験・支援者の自己紹介
安藤 智子 氏(地産地消レストラン Osteria Vai-getsu オーナーシェフ)

野田村出身の安藤さんは、高校卒業後、東京でシェフとして活躍されました。震災をきっかけに野田村にUターンしてお店をオープンしました。現在は3人の子供を育児しながら家業である漁師の仕事も行っているそうです。
山口 光司 氏(山葡萄農園Lu.cultiver)

山口さんは、栃木県の宇都宮市出身。大学卒業後に「地域おこし協力隊」として野田村の山ぶどう栽培を学ばれました。現在は独立して、地元のワイナリーへワイン原料の出荷、山ぶどうジュースの加工・販売など行っています。
外舘 崚 氏(地域おこし協力隊)

外舘さんは東京育ちですが、両親が野田村出身です。大学で福祉を学ばれ、福祉の仕事についた後、アウトドアメーカーに転職されました。現在は、「NPO法人風花」が運営する就労継続支援B型事業所六花(カフェ Rokka)で障がいを持つ方たちと、カフェ営業に携わっています。
(3)小田村長×指出氏×移住経験・支援者との対談

ここから、小田村長、移住経験・支援者と、雑誌「ソトコト」編集長の指出さん、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)も交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。
「のだ塩」について、小田村長は、「えぐみがなくて甘い、旨味がある美味しい塩です。とくに、のだ塩ソフトクリームと、のだ塩ラーメンは、どこにも出しても恥ずかしくないと自信を持って言えます」と話してくださいました。
安藤さんも、「仕上げに使うとメインが塩だと思えます。塩むすびも楽しめる特別な塩ですね」と述べてくださいました。
指出さんは、「今年の秋冬のファッションで世界的に流行している『クワイエットラグジュアリー』という言葉があります。簡単に言うと、『華美ではない形で本質をついたおしゃれ』のことで、野田村が持っている地域の本質的な豊かさを感じる人たちが関係人口として現れているのであれば、これは『クワイエットローカル』という資質なのではないでしょうか、塩はシンプルで凝縮されたものなので、『のだ塩』は象徴的だと感じています。」とコメントしてくださいました。
山ぶどう栽培について、山口さんは、「野田村で育てている山ぶどうは、糖度がかなり高い段階で収穫できるので、熟成に適しています。濃くて甘いのが特徴です。山ぶどうは1年かけてじっくり育てます。手間はかかりますが個人的には楽しいと感じています」と話してくださいました。
野田村に来る学生について、小田村長は、「若い視点で色々なことを見て話してくれるので我々も参考になります。彼らが卒業しても時々顔を出してくれるなら、地域は元気になっていく、そういう子が増えていくことを期待しています。できれば野田村で3年間『地域おこし協力隊』として活動してから就職先を探してほしい、というのが私の希望です」と話してくださいました。
指出さんは、「若い人たちが求めているのは、多分野田村への帰省的な感覚なのだと思いました。関係人口の中でもすごく大事なところで、例えば、地域おこし協力隊の任期の3年間を通して、自分がやりたいことを野田村で見つけるようになる可能性が高いのではないかなと思います」とコメントしてくださいました。
就労継続支援B型事業所六花(カフェ
Rokka)について、外舘さんは「障がい者の方のお勤めのお手伝いとしてコーヒー豆の選定や(古布を再生させる」裂き織り作業、野菜を育てたりしています。」と話してくださいました。
小田村長は、「みんなが協力して、色々な人たちが様々な活動ができることが理想ですが“Rokka”はその理想に向けて活動を行っています」と述べてくださいました。
指出さんは、「福祉とアウトドアのバランスを見ることができる、外舘さんという存在は大きいですね。“Rokka”が、おしゃれで皆が集まれる場所になるスピード感がますます助長されるのが楽しみです」とコメントしてくださいました。
Uターン移住について、安藤さんは、「震災後のボランティアで、料理の振る舞いをして欲しいとお願いをされた時に、野田村の食材でフルコースを作れることがわかって、感動と驚きでした。田舎から出たいという気持ちがあって村を出ていったのに、田舎の魅力に気づいてしまいました。この経験が野田村でお店をやりたいと思うきっかけになりました」と語ってくださいました。
最後に、指出さんは、「帰省という感覚で訪れる人たちを、友達とか、産業・農業のパートナーなどの意味合いで“誘う(いざなう)”ことが地域にとって大事な視点だと思います」とコメントしてくださいました。
参加者同士のブレイクアウトセッション
移住者と参加者の皆さんが一緒にいくつかのブレイクアウト・ルームに分かれ、「トークの感想」「移住関連の情報」「野田村への印象」など、移住・くらし・環境についての活発な意見交換が行われました。
参考リンク
会議概要
- 日時:2023年11月24日(金)19:00-21:00
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:27名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社