Fw:東北 Fan Meeting 2023 東北暮らし発見塾 テーマ編:住まい ~陸前高田・気仙沼で知る移住と住まい

Fw:東北 Fan Meeting 2023 東北暮らし発見塾 テーマ編:住まい ~陸前高田・気仙沼で知る移住と住まい イベントレポート


 東北への移住をテーマとした「東北暮らし発見塾」のテーマ別開催として「住まい」を取り上げ、移住コーディネーターや有識者を交えてディスカッションを行いました。
 移住の際に大きく環境が変わる要素のひとつに「住まい」があり、移住先の住まいの広さや使い方にも工夫の余地がある。移住者の中には、空き家や空き店舗をリノベーションなどで移住者の住居や小商いの拠点として活用する人々もいるほか、「空き家バンク」などで空き家の一覧を掲載する地域も増えていますが、三陸で隣接している岩手県陸前高田市と宮城県気仙沼市では、それぞれどのような実態や工夫があるのか、住居の課題にも取り組んでいる移住コーディネーターを迎え、地域の物件の特徴や移住者の事例、地域での受け入れ方などについて伺いました。
 また、他地域ゲストとして、Fw:東北Fan Meetingで取り上げた神奈川県真鶴町で、自らも移住者として空き家活用を進めている一般社団法人 真鶴未来塾の玉田麻里さんをお迎えして、移住と住まいについての視点を提供いただきながら、ディスカッションを行いました。


(1) 登壇者自己紹介
多勢 瞳 氏(特定非営利活動法人 高田暮舎 移住コンシェルジュ)
落 優介 氏(特定非営利活動法人 高田暮舎 空き家バンク担当)

 陸前高田市について、多勢さんは「沿岸なので雪は降りますが積もることはほとんどありません。夏は涼しく暮らしやすい自然環境です。市の中心から端まで車で30分ほどのコンパクトシティで、車がないと不便ですが、海も山も行くことができます。マルシェなど飲食店もそろっていますし、体を動かす施設もあり、イベントも毎週のように開催されていて結構賑やかな町だと感じています」と、話してくださいました。
 陸前高田市では、58件の空き家を空き家バンクに掲載して、そのうちの6~7割が購入・賃貸されたそうです。海、川、山がある地域なので家もバリエーションがあり、優れた建築技法を持つ気仙大工の技術が使われている家も多いそうです。空き家の事業利用の例として、泊まれる古本屋「山猫堂」や保育園「保育園ゆいま~る たかた」が紹介されました。
 お試し居住について、災害公営住宅を利用して最長1年間暮らせる制度が去年の11月からスタートしました。生活家電も備え付けられておりWi-Fi も通っているので、布団と冷暖房器具があればそのまま暮らせるそうです。現在10組が入居中で、住民同士での交流会などもあるようです。移住を検討されている方におすすめ、とのことでした。


加藤 航也 氏(気仙沼市移住・定住支援センター MINATO)
吉川 晃司 氏(くるくる喫茶うつみ 店主)

 気仙沼市について、加藤さんは「気仙沼市は、生活圏が陸前高田市とほぼ同じで『海と生きる』を掲げています。少しずつ知名度も上がり『東北エリア住みたい田舎ベストランキング2023』で総合部門2位になりました。最近は、子育て教育にも力を入れていて、住みやすい環境が整ってきており、自分のやりたいことと町の未来をリンクさせながら活動している、プレイヤーが見やすい環境にある町だと感じています」と話してくださいました。「気仙沼市移住・定住支援センター MINATO」では、住まい、仕事、コミュニティなどの総合的な相談を行っています。お試し移住も、最短3泊4日で最長2ヶ月。宿泊施設の補助金や災害公営住宅を活用した長期移住体験も活用できます。空き家バンクでは161件の登録があり半分以上ほど成約している、とのことでした。
 「くるくる喫茶うつみ」は閉店した菓子店をリノベーションして誕生しました。店主の吉川さんは災害復興の際、商業施設や公共施設などの建築設計、一般社団法人の事務局として経理や事務など、多岐にわたり活動されました。吉川さんは「気仙沼に来てから、色々なチャレンジをしている人が多いと気づきました。若い人が活躍するためのイベントなども行いましたが、イベントが終わると元の空間に戻ってしまう課題がありました。それで、拠点となるお店があるといいな、と思ったのが喫茶店を始めるきっかけです。『くるくる喫茶』は、カウンターの中の人がくるくる入れ替わり、客席にいる場合もあります。様々なコミュニケーションがあり、色々な人のやりたいことを受け入れる場所になっているのではないか」と語ってくださいました。


玉田 麻里 氏(一般社団法人 真鶴未来塾 代表理事)

 真鶴町は、神奈川県の西端、電車に10分乗ると静岡県に着く場所で、2017年には神奈川県唯一の過疎地に認定された街です。
 玉田さんは移住の際、町に空き家が沢山あるのに住む家をなかなか見つけられなくてとても苦労したそうです。その経験から2021年度に空き家バンク窓口業務を始めました。2019年度の調査の結果、7年前の時点で568件の空き家があったそうです。現在は200名ほどの方が登録しているとのことでした。現在、利用希望の60%が50代以上の方なので、若い方にも移住に興味をもってもらうことが課題、とのことでした。
 玉田さんは「パン屋やピザ食堂を開業した移住者の方もいて、最初は小さくお店を開いて、そこで縦にも横にも関係性を街の中で作り上げてから少し大きめのお店に広げていく、じわじわ地域に根付いていくのが真鶴スタイル なのかなという風に日々感じています」と話してくださいました。


(2)トークセッション ー移住と住まいを知る

 ここから、ナビゲーターの原亮(エイチタス株式会社)も交えて、特定のお題にそって意見を述べ合うトークセッションが行われました。

 移住者について、気仙沼市移住センターを通しての移住者は20代から30代が多いそうです。移住後に家族が増えて広い家へ引っ越しを検討している方、シェアハウスや大学生のインターン用の住居などのニーズが増えているそうです。
 空き家との向き合い方について、真鶴では「空き家勉強会」を行っています。小規模な空き店舗を活用した、宿泊できる出版社「真鶴出版」をはじめ、小さな仕事を自分たちで作っていくチャレンジができる街で、皆が助け合いながら生活している、とのことでした。
 陸前高田市の空き家バンク利用の実例として「保育園ゆいま~る たかた」が紹介されました。「保育園ゆいま~る」は岩手県一関市を拠点にしています。陸前高田市では、子育てに関する課題があることについて、市役所の担当職員や市議会議員と共通認識があったそうです。つながりのあった「保育園ゆいま~る」代表と協議したところ、課題解決のため陸前高田市に空き家を利用した「保育園ゆいま~る たかた」がオープンしました。
 原は「市が課題解決のために外からプレイヤーを引っ張り、活用できた事例で新鮮ですね。移住・空き家コーディネーターは、つなぎ役として外との接点を増やす大事な機能だと思います」とコメントしました。
 加藤さんは「町の課題は、町に関わるチャンスでもあると考えています。課題解決した後に来てもらうのではなく、仲間として最初から気仙沼に関わって一緒に解決する、というものも戦略としてあると思いますし、個人的にはその方が楽しいな、と感じています。移住だとハードルが高いかもしれないですが、まず、『関わりしろ』を見つけて喫茶店などを拠点に通ってもらうところから始めて貰えると嬉しいです」と、思いを語ってくださいました。
 セッションの総括として原は「空き家、空き店舗は、活用の仕方次第で若い方が活躍できる場となり、移住と親和性があること。社会課題を解決する装置だったり、課題解決そのものになったりする場合もあるので『関わりしろ』も関係していること、 広い意味での関係人口・課題ベースでの関係人口づくりという面でも空き家は大切なもの、ということがイメージできたかもしれません」と話を締めくくり、トークセッションは終了となりました。


移住者×参加者同士のブレイクアウトセッション

 移住者と参加者の皆さんが一緒にいくつかのブレイクアウトルームに分かれ、移住・くらし・環境についての活発な意見交換が行われました。
 参加者から「紹介して頂いた場所に行きたくなった」「ゆっくり静かに暮らせるのは魅力的だと思った」「空き家活用の課題解決に良い学びとなりました」などの感想もあり、盛況のうちにセッション終了となりました。


参考リンク


会議概要

  •  日時:2023年11月14日(火)19:00-21:00
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:29名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社