復興大臣と語ろう『東北未来ダイアログ』 Fw:東北 Fan Meeting “Cheer Up! Project”キックオフ セッション

復興大臣と語ろう『東北未来ダイアログ』 Fw:東北 Fan Meeting “Cheer Up! Project”キックオフ セッション イベントレポート


 “Cheer Up! Project” は、今年度から始動するFw:東北 Fan Meetingにおける新たなワークショップで、被災地の課題解決に取り組む事業者が、その活動や今後の取組等を紹介し、それらの実現に向けて必要な仲間づくり、ネットワークの形成、ファンドレイジング等を応援するために、有識者を交えたディスカッションを実施するとともに、参加者の双方向の交流によって、事業者の活動に資する取組を拡げていくことを目指しています。
 今回は、このプロジェクトのキックオフとして、岩手・宮城・福島で東北の未来につながる新たな取組に挑んでいる10名の事業者をお招きして、復興大臣と語り合う「東北未来ダイアログ」を開催しました。


渡辺復興大臣挨拶

 冒頭に、渡辺復興大臣より、ご挨拶がありました。
 復興庁においては、これまでも、被災地における様々な課題解決や地域経済の再生等に向けた取組に対して、モデル事業や、ハンズオン、マッチング等による支援を行ってきました。こうした支援 に加えて、これからの東北の未来を切り拓いていく ためには、 被災地で活躍する民間の皆様が、それぞれの想いを知り、共有できる将来像を語り、さらにつながりを深めていくことが重要だと語られました。
 このプロジェクトにより、民間の皆様の取組みを被災地 内外に発信し、仲間をつのり、ネットワークを築く一助になればと願っています、とのことでした。


プレゼンテーション
一般社団法人イトナブ石巻・株式会社イトナブ(宮城県石巻市)

 代表理事・代表取締役の古山隆之さんは、地元石巻を高校卒業と同時に離れ東京にてITと出会い、事業を起こしました。3.11以降は東京と石巻を行き来する日々を続け、母校である宮城県立石巻工業高校や近隣の高校においてソフトウェア開発の授業を行いました。同時に若者であれば誰でもが気軽にプログラミングを学べるイトナブを立ち上げ、小学生から大学生を中心にプログラミングについて学べる環境づくりや、とがった若者が育つ環境づくりに人生をそそぎながら「触発」「遊び」というキーワードで地方都市にてプログラミングを学べる場を展開中です。


大堀相馬焼 松永窯(福島県浪江町)

 松永窯四代目の松永武士さんは、浪江町出身。創業明治43年の大堀相馬焼窯元の長男として生まれました。大学時代にガッチ株式会社設立、海外ヘルスケア事業を展開します。しかし、東日本大震災で家業被災を経て、日本の伝統工芸価値を世界に発信する事業へ転換。現在は工芸品販売、全国の商品開発、WEBマーケティング等、復興ノウハウを提供するプロデュース事業を展開しています。


株式会社サムライアロハ(宮城県仙台市)

 代表取締役社長の櫻井鉄矢さんは、「日本の伝統衣装である『着物』は、ライフスタイルの変化から国内に約2億着が着られずに眠っていると言われています。私たちは着られなくなった着物を選別し、宮城県のお母さん達の手で一着ずつ丁寧にほぐして洗い、裁断し、福島県、岩手県の縫製工場の皆さんの手でアロハシャツに仕立て直しています。侍の不屈の精神と、復興に立ち向かう東北の姿を重ね合わせて『サムライアロハ』と名付けました」とコメントしてくださいました。


ドメーヌミカヅキ(岩手県陸前高田市)

 代表の及川恭平さんは1993年生まれで、陸前高田市出身です。大船渡高校2年生のときに東日本大震災を経験されました。10年後に地元に戻り事業を起こすことを決意し、ワイン生産、ワイン流通、海外ワイナリーでの修行の後、2021年に岩手県陸前高田市でワイナリー起業。ソムリエとしても活動中です。持続可能性と関係人口、温暖化対策をテーマに、世界に誇るワイン造りを目指しています。


アルファ電子株式会社(福島県天栄村)

 代表取締役社長の樽川千香子さんは、介護職、事務職、専業主婦を経て、家業であるアルファ電子株式会社へ2015 年入社。娘が幼少期に小麦アレルギーだった経験や、仕事、家事、育児の両立に奮闘した経験から、女性の心に寄り添う“ ものづくり” を目指しています。食品部門の立ち上げを自ら進め、4年前から米粉麺の研究開発を開始。“日本一美味しい米粉麺をつくる” という目標のもと、都内の大学と科学的根拠をもった研究を重ねてきました。
 第8 回新東北みやげコンテストでアイディア特別賞、ふくしまベンチャーアワード2021特別賞、東北ニュービジネス大賞2023 奨励賞などを受賞されています。


共和水産株式会社(岩手県宮古市)

 岩手県宮古市の水産加工会社「共和水産株式会社」代表取締役専務の鈴木良太さんは、「イカ王子」の愛称で知られています。カップ入りの「三陸産いかそうめん」をはじめ、「王子のぜいたく至福のタラフライ」等の人気商品を擁しています。TV出演なども多数あり、水産業の枠を超えて幅広く活動中です。


amu 株式会社(宮城県気仙沼市)

 代表取締役CEOの加藤広大さんは、1997年2月25日神奈川県小田原市出身。2015年8月大学1年の夏休みに初めて宮城県気仙沼市に訪れ、沼にハマったそうです。東京の大学に通いながら年間100日気仙沼に通う日々を過ごしました。大学中退後、当時最年少で(株)サイバーエージェントに入社。AbemaTVの番組プロデューサーを担い2019年宮城県気仙沼に移住後、廃漁網アップサイクルに興味をもち事業検証を行っています。


haccoba - Craft Sake Brewery -(福島県南相馬市)

 代表の佐藤太亮さんは、「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行う酒蔵「haccoba -Craft Sake Brewery-」を福島県の小高というまちで営んでいます。かつて東北でつくられていた自家醸造酒のレシピを受け継ぎ、日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせたお酒をメインで展開しています。福島浜通りで酒蔵を営みはじめたところ、気候変動というグローバルな課題がいつしか自分ごととなり、電力事業も始めたそうです。慶應経済学部卒で、楽天やWantedlyを経て独立され、クラフトサケブリュワリー協会副会長も務められています。酒づくりの修行先は、世界一美味しいと思っている新潟県の酒蔵「阿部酒造」だそうです。


株式会社岩泉フォレストマーケティング(岩手県岩泉町)

 ステージマネージャーの松永充信さんは、埼玉県出身で、大学卒業後、マーケティング・リサーチ(リサーチャー)、EC家具(物流・品質管理等)の業界を経て岩泉町に移住されました。岩泉町にある豊かな森林資源(主に広葉樹)とFSC森林認証を用いた新たな取り組みに参加され、会社の設立から運営に携わってこられました。


株式会社ケイリーパートナーズ(福島県郡山市)

 代表取締役・COOの鷲谷恭子さんは、2011年の東日本大震災以降、子育て支援や通訳ガイド、まちづくりなどのボランティア活動を行ってきました。2019年5月、1日2時間からの自由度の高い働き方で生産性とスキルを上げるビジネスモデルを構築し、『2hours』を開業、同年10月、チーム型アウトソーシングサービスで子育て女性が活躍する『株式会社ケイリーパートナーズ』を設立されました。2021年度第20回女性起業家大賞奨励賞(スタートアップ部門)を受賞されています。


ダイアログ(参加事業者×渡辺復興大臣×ファシリテーター)

 参加事業者と渡辺復興大臣、ファシリテーターの原(エイチタス株式会社)を交えてダイアログが行われました。
 渡辺大臣は、「復興というのは経済復興と同時に、人と人がいかにつながっていくかが、より強固な復興になると思っているので、どのように連携できるか考えたい」と想いを述べてくださいました。
 最初に「事業を飛躍させる上でチャレンジしたいこと」というテーマで活発な議論が展開されました。
 渡辺大臣は、「女性が活躍してもらうために女性が働きやすい環境づくりが重要なので企業としても考えていただきたい。もう一つの点として、自分が生まれ育った、または移住してきた地域をいかに活性化していくかが基本中の基本で、そうした考え方を多くの人が持てばそれぞれの地域が活性化していくわけですから、皆さんこれからも、自分の意志を強固にもって地域活性化を目指すことがひいては世界に発信できる要素になるのではと思っております」とコメントしてくださいました。
 女性の活躍について鷲谷さんは、「弊社で行ったアンケートでは、9割の女性が子育てをしながら働きたいと思っている。ただ時短勤務など制度としては整っているように見えても実情は難しく、セカンドキャリアを挫折する方が非常に多い。私たちが子育てをしながら活躍する姿の実例を作ることで輪が広がってきていると実感しています」と語ってくださいました。
 樽川さんは、ご自身でも娘を育てながら仕事をしてきた経験から、「大変だったのは子どもを預ける場所があまりなかったこと、受け入れ体制がないと自分の人生を捨てて取り組まないといけない極端な状態になってしまう部分があると感じています。自分の幸せも、家族の幸せも、さらに家業も親も、皆が幸せにできる環境をつくれる社会にしていければと思っています」と話してくださいました。
 古山さんは「IT業界は男女比率が変わらなくなってきている。地方では特に女性の働き場がないのでITを使って働く環境を構築することが重要だと思っています」と話してくださいました。
 他にもセッションでは、漁具や着物の再利用に関連して、捨てればゴミになってしまうものを活かして資源にすることは循環型社会にとってとても大事であること。クラフト酒と大堀相馬焼のコラボ、陸前高田市の歴史をワインに活かしていくこと、漁業と飲食の点と点を線にする活動について、などが話し合われました。
 最後に「想い描く未来・実現したいあり方」というテーマで、それぞれが自分の地域や東北の未来を実現したいことを語りました。



 最後の挨拶として渡辺大臣は、「このFw:東北 Fan Meeting “Cheer Up! Project”1回目を出発点として、それぞれの地域、それぞれの人に多くの仲間がいるわけですから、そうした仲間と繋がり合う事が大変重要だと思います。私も東北活性化のために今後とも皆様とつながっていきたい、今日は本当にありがとうございました」とコメントしてくださいました。


参考リンク


会議概要

  •  日時:2023年6月25日(日) 15:30-17:00
  •  場所:enspace(宮城県仙台市青葉区国分町1丁目4-9)
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社