Fw:東北Fan Meeting 2022 東北デジタル創生塾Vol.7オープンデータで考える東北の地域課題解決〜子育て・防災での利活用とは? イベントレポート
東日本大震災をきっかけに、日本国内ではITに精通した人々が「シビックテック」と呼ばれる活動で、プロボノとして地域課題解決に乗り出す例が増えています。同時に、地域課題の可視化や、解決手段の元として、だれでも自由に扱えるデータを「オープンデータ」として利活用する動きも、国や自治体を中心に活発になってきました。
東日本大震災から間もなく12年が経とうとしているいま、東北でオープンデータを活用して新たにできることは何でしょうか。今回の東北デジタル創生塾では、オープンデータの利活用をテーマに取り上げ、自治体や地域、民間など様々な立場の人々が、地域課題解決に向けてどのような行動を取りうるのかを考えます。具体的な話題として、子育てと防災の2つの分野で、それぞれのIT関連の人々の活動を追い、意見交換を行いました。
登壇者には、仙台のシビックテック団体、Code for SENDAIから、子育ての課題解決に注力している佐藤里麻さん、東日本大震災を契機にIT領域から防災活動を行っている一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT
DART)の宮川祥子さんをお招きして、それぞれの活動を伺うほか、総務省地域情報化アドバイザーとしても活動しているCode for Japan研究員の石塚清香さんも交え、オープンデータ利活用のポイントを探りました。
インプットトーク
佐藤 里麻 氏(Code for SENDAI)

2児の母である佐藤さんは、仙台の保育園マップを作りたいとの思いから「Code for SENDAI」を立ち上げました。現在は、企業主導型保育園「ベビープラス仙台」、地域交流スペース「キッズプラス仙台」、親子で利用できるコワーキングスペース「親子プラス仙台」などの子育て支援事業を行っています。
「Code for SENDAI」ではpodcastで配信しているシビックテック入門「C4SDシビックテックはじめの一歩」、仙台の災害・防災を考える「仙台の困りごと解決ワークショップ」などの活動を行っています。
オープンデータ活用事例として「仙台保育園マップ」が紹介されました。「Code for SAPPORO」のオープンソースを利用して仙台市の保育園を地図上にマッピングし、仙台市のオープンデータを利用して必要な情報を作成したそうです。
また、宮城県内のオープンデータを集約する「宮城県及び市町村共同オープンデータポータルサイト」も紹介してくださいました。
宮川 祥子 氏(一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART) 代表理事/慶應義塾大学 看護医療学部 准教授)

宮川さんは、災害時における組織の連携支援の大切さを話してくださいました。
「外部支援団体」は災害支援のエキスパートですが現地の情報には必ずしも詳しくありません。一方で「被災地内NPO」は災害対応の経験は少ないですが地域の支援ニーズを良く知っています。ですから、この両者をつなげ、支援者間の情報を共有し被災地行政との窓口を一本化する中間支援団体の存在が重要であることが指摘されました。
「一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)」は民間支援団体が現地で上手く活動できるようにIT支援などの後方支援活動を行っています。IT支援は、データの入力や機器のセットアップも含まれるので高度なスキルがなくてもできることは沢山あるそうです。
オープンマップ活用事例として、災害ボランティアセンターでのニーズ情報の入力と地図化、支援者の活動状況の集計と地図化したニーズ・シーズマップ、民間支援先遣隊の情報共有システムなどが紹介されました。
宮川さんの話から、地図とオープンデータの活用が災害支援においてとても重要であることが示されました。
石塚 清香 氏(総務省 地域情報化アドバイザー/Code for Japan研究員)

石塚さんはこれまで、WEB上の子育て関連オープンデータを集約した子育てポータルサイト・アプリ「育なび.net」の企画・構築、固定電話など音声による一斉配信で情報の伝達と収集を行う「緊急時情報システム(5Co Voice)」の構築支援、横浜市金沢区が保有する写真をオープンデータとして公開できるサイト「金澤写真アルバム」の企画・構成、また「Code for Japan/Code for YOKOHAMA」でシビックテック活動を行ってこられました。
石塚さんは、「最近はデジタル化の進展により、行政サービスが民間サービスとの比較で評価される時代です。行政サービスのアップデートを行うには、オープンガバナンス(行政側のオープン化と市民側の積極的な議題解決への関与をもって達成する社会全体の新しい統治プロセス体系)による民間やシビックテックとの協働が必要だと思います」と話して下さいました。
より良いオープンデータ活用推進のために最も必要なのは「対話の場の創造」で、自治体側も市民側も、「利用者を中心に考えること」「最初から100点満点を目指さないこと」「手段を目的としないこと」が大切であることが示唆されました。
登壇者・参加者のみなさんとのオンラインセッション

次に、ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者・参加者とのトークセッションが行われました。
石塚さんは、実際に町を歩きながら避難経路や危険箇所などの情報を集め、オープンストリートマップによる地図作成を行う「マッピングパーティー」を紹介してくださいました。日常の定期的な防災活動、町内会や子ども会、学校などで活用することの大切さが示唆されました。
トークセッションの総括として佐藤さんは、「マッピングパーティーは紙の地図でもできる、と教えていただいたので、子どもたちと一緒にデジタルに囚われすぎず行っていきたい」と話してくださいました。
宮川さんは「ITという言葉を一旦忘れてほしい。大事なのは、スムーズに進めていくためにどんな情報が必要なのかコンセンサスをつくること、紙の地図にシールを貼るのもITだと思っているのでITをもっと幅広く捉えることが大切だと思います」とコメントしてくださいました。
石塚さんからは、「私はデジタルを活用する場合、アナログ7、8割デジタル1、2割の割合で考えれば良いと思っています。何をするためにITを使うのかを考えることが必要で、ITを先に考えてしまうと色々と見誤ることが多いと思います。広くアンテナを張りながら考えていただく必要があると思います」とのご意見をいただきました。
参加者からは、「復興にITがどのように使われているのか、よくわかりました」「大変勉強になりました」「オープンデータについてわかりやすく教えていただいた」などの感想もあり、盛況のうちにセッション終了となりました。
参考リンク
- • 佐藤 里麻 氏(Code for SENDAI) の資料はこちら
- • 宮川 祥子 氏(一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART) 代表理事 / 慶應義塾大学 看護医療学部 准教授) の資料はこちら
- • 石塚 清香 氏(総務省 地域情報化アドバイザー / Code for Japan 研究員) の資料はこちら
会議概要
- 日時:2023年1月11日(水)15:00-17:00
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:58名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社