Fw:東北Fan Meeting 2022 東北デジタル創生塾Vol.5 東北ではじまる介護事業者のデジタル活用 〜介護×DXの支援のポイントを探る イベントレポート
いち早く超高齢化社会を迎える地域が、東北には数多く存在します。これからの社会を支えるプレーヤーとして、東北の介護事業者は今後一層、重要な役割を担うことになります。人材難や需要のひっ迫、社会課題の深刻化などに向き合うためにも、介護事業者にも積極的なデジタル活用が望まれます。
今回の東北デジタル創生塾では、介護領域のデジタル活用をテーマに取り上げ、地域の介護事業者をゲストに招き、事例の検討や支援のポイントを議論していきます。地域のゲストには、株式会社航和代表取締役の佐々木航さんをお招きしました。
岩手県雫石町を中心に介護施設を展開する株式会社航和は、50年前に前身の整骨院から2007年に介護事業へ参入し、居宅介護支援事業所、通所介護事業所、訪問介護事業所のほか、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスなどを開設してきました。佐々木さんは施設へのIoT導入などで、入居者のケアの充実や、職員の働き方改革にも成果を挙げたほか、ご自身もスタートアップとして新たなサービスの立ち上げにも挑んでいます。
また、専門家として、地域情報化アドバイザーの木暮祐一さんをお招きし、東北での介護×デジタルを進める切り口についてお話を伺いました。佐々木さんの事例も踏まえ、地域の事業者に促すべき変化や、行政との協業や支援のあり方を考えました。
インプットトーク
佐々木 航 氏(株式会社航和 代表取締役)

佐々木さんから、「東北ではじまる介護事業者のデジタル活用」について教えていただきました。佐々木さんが代表取締役を務める介護施設を展開する「株式会社航和」では2015年の離職率が28%でした。離職の原因について介護士にヒアリングしたところ、「介護は大変じゃない、事務作業が大変です」という言葉に佐々木さんは衝撃を受けたそうです。それで事務作業の軽減と情報共有化の改善に取り組みました。介護現場でのICT化実現により介護士の業務時間が1年間で約91時間改善されました。2017年には離職率が8%になったそうです。
佐々木さんは、業務改善のためのサービスを3つ紹介してくださいました。
(1)介護スマートルーム
「アレクサ」(クラウドベースの音声サービス)対応デバイスを使って、音声操作での家電操作、ビデオ通話やメッセージの送受信を行う。
(2)ベルタク
高齢者の移動課題解決するために地域のタクシー会社と連携したタクシー配車サービス。
(3)介護クラウド
手続きの多い対面契約を行わない、介護契約書クラウド管理。
また、業務支援以外のサービスとして、AIにより表情から今日の調子を読み取りストレスチェックをして最適な音楽を選択してくれるサービスSOLOと業務提携、実証試験をしているとのことでした。
佐々木さんは、「介護デジタル化は介護現場の課題解決がきっかけでした。自分たちの根底にある思いは『介護で困っている人たちを幸せにしたい』ということです。これからも最前線で働く介護士の業務改善を行っていきたい、と述べてくださいました。
木暮 祐一 氏(地域情報化アドバイザー)

木暮さんからは、「介護×DXの支援ポイントを探る」というテーマで教えていただきました。
少子高齢化社会に向けて同じ働き方では乗り切れない。医療福祉の労働生産性を高めることが必要で、そのためにはDXを正しく理解して意識することが大切とのことでした。DXはただデジタル化するのではなく仕事のやり方を変革することだと指摘されました。
デジタル変革成功のポイントには5つあり、
(1)組織全体で共通の目標やビジョンを持っていること
(2)変革を推進するための強力なリーダーシップが必要
(3)新しい技術やビジネスモデルを導入するための予算とリソースの確保
(4)変革に伴うリスクや不安を乗り越えるための組織内の協力とコミュニケーション
(5)変革の過程で得られる成果の評価とフィードバック、そしてさらなる改善
とのことでした。
指輪型ウェアラブルデバイスや、睡眠モニタリングアプリなど、在宅高齢者ケアにも役立ちそうなツールも紹介されました。
今はコロナ禍で、世の中の流れとしてもデジタル化を進めるチャンス、福祉の現場も激変するタイミングなのではないか、とコメントしてくださいました。
登壇者・参加者のみなさんとのオンラインセッション

次に、モデレーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者・参加者とのトークセッションが行われました。
ヒューマン・インターフェイスについて、木暮さんは「現在アレクサなど音声入力の性能が上がっている。文字入力よりも言葉で操作した方が受け入れやすいかもしれない」とコメントしてくださいました。
佐々木さんも、音声入力の方が簡単に覚えると感じています。「今後は音声での操作が主流になるのではないか、『ベルタク』もアレクサとの連携を進めています」とのことでした。
木暮さんは「高齢化が進んでいる地方で、シニアがスマホなどデジタルを活用していくと地域が盛り上がると思います」ともコメントしてくださいました。
セッションでは、活発な質問や取り組みが展開され、参加者からは、「色々な可能性を感じた」「介護の参考になった」「介護のデジタル化はこんな風に進んでいるのだと感心しました」などの感想もあり、盛況のうちにセッション終了となりました。
参考リンク
- • 株式会社航和
- • 木暮祐一オフィシャルサイト
- • 木暮祐一氏の発表資料はこちら
会議概要
- 日時:2022年12月13日(火)19:00-21:00
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:18名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社