Fw:東北 Fan Meeting 東北デジタル創生塾 Vol.1 「デジタル活用で描く新しい東北の未来」イベントレポート
東日本大震災の発災から11年が過ぎ、その間にITなどのデジタル領域では技術、サービスが大きく進化し、私たちの暮らしも変化を遂げてきました。国はデジタル田園都市構想を掲げ、民間においてもデジタルの活用で社会課題解決に挑む起業家などが、地域で活動を起こす例も増えてきました。一方で、東北はデジタルの活用に大きな余地を残しており、暮らしや営みをめぐる地域の課題解決や、若い人々の活躍の場を作るためにも、デジタルによる変革は大きな期待を寄せるべきところです。 今回のFw:東北Fan Meeting 東北デジタル創生塾では、デジタルの活用を訴えながら東北の未来を拓く活動をしているゲストを招き、彼らが実践する活動事例や描いている構想をヒントに、難しく考えがちなデジタル活用を、東北の課題解決にどう取り込んでいくべきか、東北に起こっているあらゆる社会課題と照らし合わせながら考えました。
藤井 靖史 氏(西会津町 CDO[最高デジタル責任者/総務省 地域情報化アドバイザー/内閣官房 情報通信技術総合戦略室 オープンデータ伝道師)
藤井さんから、高齢化率50%をこえる福島県西会津町のDXを教えていただきました。OODA(ウーダ)ループ「みる、わかる、きめる、うごく」の必要性が紹介されました。とくに、地域に出て、町を観察し、データを「みる」こと、地域の課題、リスク、町の状態をデータから読み解く「わかる」を重要視しているそうです。西会津町はスマホやタブレットの使い方など、デジタル技術に関して幅広く相談を受け付ける「デジタルよろず相談室」「デジタル教室」を開設しました、高齢者を含めて様々な人との対話から本来の課題を探りユーザー視点を得ることが大事、とのことでした。 また、Web3、 Web2.0の取組みについても説明されました。日本のデジタル化は15年遅れていて、特に自治体が時代の変化を感じているか疑問が投げかけられました。
藤井さんは最後に、昭和を脱却して時代に合わせていくことがDXなのではないかと、コメントしてくださいました。
Web3…ビットコインやNFTなど、ブロックチェーン技術により情報を分散的に管理して、大手検索エンジンや大手SNSプラットフォームを用いなくても必要な情報のやり取りができる仕組みを指して用いられる。
Web2.0…インターネット上のWebサービスの形態を表したもの。発信者が限定的・一方向的だったそれまでのWebサービスと違い、SNSなど多くの人が発信者になれる、情報の相互利用環境を指して用いられる。
福留 秀基 氏(株式会社MAKOTOキャピタル 代表取締役/一般社団法人 DX NEXT TOHOKU 理事))
福留さんは、幼稚園の頃からデジタル技術に触れているデジタルネイティブ世代です。東北の起業家、企業に向けて、デジタル技術を用いた経営コンサルティング事業をされています。
福留さんは、企業DXは取組みであり、現行ビジネスで起きている様々な荒波を乗り越えて次の時代を生き抜くためのものだと考えているそうです。事業承継や跡継ぎの問題をサポートする必要性を感じているとのことでした。
DXの取組み方として、ただIT化するだけではなく、データを集約、分析して、戦略を策定し、向かうべき方向性を決めることが大切だと指摘されました。
中軽米 真人 氏(八幡平市役所 商工観光課 課長補佐 兼企業立地推進係長)
中軽米さんは、過疎地だからできる未来の課題解決について「起業志民Project」の取組みを教えてくださいました。
なぜ人口減少がおきるのか、数字や事実を積み上げ、課題の本質を見極めることが必要であることが指摘されました。検証の結果、八幡平市には望む仕事がないことが最大の理由で、特に情報通信業が不足していることが推論できたようです。
解決策として、IT起業家育成のために、未経験者に3か月かけてプログラミング、経営、新規事業開発の手法を完全無料で提供する「スパルタキャンプ」、5年無料で使用できるシェアオフィス「八幡平起業家支援センター」、資金調達をハンズオン支援する手法を取り入れました。また、起業して経験を積んだメンバーがスパルタキャンプの講師として後進の育成を行う、という好循環になっているそうです。
人口減はピンチではなく次世代の成長産業をつくるチャンスであり、ITで誰もが幸せに暮らせる人口減社会の実現、働いて楽しいまちを目指している、とのことでした。
トークセッション

ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者とトークセッションが行われました。
福留さんが発起人となった「みちのくDAO」が紹介されました。東北復興と別軸のweb3経済圏を作ることが目的だそうです。今後の展望として、デジタル版の無尽機能実装、地域でのサスティナブルなクラウドファンディング機能、地域通貨発行などを実施し、東北地域の経済活動を担う組織になることを目指しているとのことでした。
「これからの東北とデジタル化」というテーマで、藤井さんは、「いまだに高度経済成長期の成功体験から抜け出せていない。世代交代の必要性があり、上の世代がどれだけ若い世代を支えられるかを問われている」とコメントしてくださいました。
中軽米さんも、次の世代を育てていくことが上の世代の役割で、技術や経営などのノウハウを伝えることの大切さを話してくださいました。
DAO…分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)のこと。ビットコインに利用されているようなブロックチェーン技術を活用して意思決定に参加する組織の形態を指す。
登壇者と参加者との交流タイム
登壇者と参加者との交流タイムでは、参加者から「私も頑張っていかなければいけないと思った」「新鮮な驚きと親近感を持った」「非常に刺激があった、エネルギーをいただいた」等の感想が寄せられ、盛況のうちに会が終了となりました。
参考資料
- • 藤井 靖史 氏(西会津町 CDO[最高デジタル責任者/総務省 地域情報化アドバイザー/内閣官房 情報通信技術総合戦略室 オープンデータ伝道師)の資料はこちら
- • 福留 秀基 氏(株式会社MAKOTOキャピタル 代表取締役 / 一般社団法人DX NEXT TOHOKU 理事)の資料はこちら
- • 中軽米 真人 氏(八幡平市役所 商工観光課 課長補佐 兼企業立地推進係長)の資料はこちら
会議概要
- 日時:2022年6月7日(水)19:30-21:30
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:38名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社