Fw:東北 Fan Meeting Vol.8 「ハンズオン支援とパートナーシップによる協働の未来」
東日本大震災からの復興においては、民間企業やNPOが大きな役割を果たしています。公平性や効率性を重んじ、画一的になりがちな行政が苦手とする、個々の実情に応じた被災者支援などには民間の力が欠かせません。
民間の方々がより活躍するために、行政には何ができるのでしょうか。一つの試みとして、復興庁では、補助金やモデル事業といった従来の施策とは異なる「ハンズオン支援」に取り組んできました。支援対象団体の課題を整理して、一緒に悩み、知恵を出し、パートナーを見つけて、人を紹介し、その活動を持続可能なかたちで自走させることを目的とした事業です。
宮城県石巻市において、震災で移動手段を失った被災者に自動車を提供する仕組みをスタートさせた一般社団法人日本カーシェアリング協会も、今年度、このハンズオン支援を受けて、その活動をさらに展開しつつあります。
今回のFw:東北Fan
Meetingでは、同協会代表理事の吉澤武彦氏、ハンズオン支援事業の受託者として様々な団体を支援してきた株式会社日本総合研究所の佐藤善太氏をお招きして、具体的な事例に即して、この支援の意義や難しさなどを伺いました。
郡山市役所から復興庁へ出向して同事業を担当する樋口も交え、自治体における民間との協働のあり方についても話題を広げながら、行政・企業・NPOといったトライセクターのパートナーシップについて、参加者の皆さんと考えました。
吉澤 武彦氏(一般社団法人日本カーシェアリング協会 代表理事)
日本カーシェアリング協会は、「寄付車」を活用して支え合いの仕組みを作る非営利組織です。「支えあう地域づくり」を目的として、車を共同利用する「コミュニティ・カーシェアリング」が紹介されました。サロン活動、ツアー活動、外出支援活動を組み合わせて、地域コミュニティによる柔軟な運営が行われています。
吉澤さんは、「コミュニティ・カーシェアリング」を他の地域へ展開するために「ハンズオン支援」を活用されました。「コミュニティ・カーシェアリング導入サポートプログラム」「コミュニティ・カーシェアリング・グループ」の活動を拡大しています。現在、カーシェアリング石巻で11地域、石巻以外で12地域に導入されています。
災害時に無料で車を貸し出す「モビリティ・レジリエンス」支援も紹介されました。吉澤さんは、被災地に車を迅速に届けるためには、企業・自治体とアライアンスとの協力体制が必要だと感じていたそうです。「ハンズオン支援」を活用して「モビリティ・レジリエンス・アライアンス」を発足されました。現在企業7社と協定締結し、5自治体と協定締結に向けて進展している、とのことでした。
吉澤さんは、「ハンズオン支援」を活用して、枠組みの整理、資料準備、計画作成、ネットワーク構築等のサポートを受けられたので、ビジョンの実現に向けて「判断と実行」に集中できた、と語ってくださいました。
佐藤 善太氏(株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門シニアマネジャー)
佐藤さんは、地域づくりの”Good Cycle”をつくるために、人とチームの問題をしっかり見つめ、本質に立ち返ることを恐れないこと、そのうえでプロジェクトの成果拡大を図り「ビジョン」と「チーム」「継続性」を確立することを大事にしている、とのことでした。
サポーターとしての考え方も話してくださいました。対話から始めて、心理的安全性を築くことが重要で、お互いを認め合い、受け止め、じっくり聴くこと、できるだけかざらずにありのままを話す場をつくることを意識しているそうです。
「ハンズオン支援」の難しさとして、支援対象団体それぞれにオーダーメイドで取り組む必要があるので支援のボリュームを大きくすることが難しいこと、「人とチーム」への眼差しと「柔軟性」を持った支援は大切だが、その価値が伝わりにくい支援スタイルであることを挙げられました。 ハンズオン支援を活かすには、行政職員にも伴走者として主体的に関わっていただくこと、支える側も学び、成長する機会とすること、支援する側とされる側の二分構造から共創関係になること、が大切だと指摘されました。
地域づくりに限らず、事業支援の場面においてもハンズオン支援の考え方を活かすことができるので、こういう考え方が広がれば良いな、と感じているそうです。
トークセッション
ファシリテーターの原 亮(エイチタス株式会社)、樋口 紫(復興庁 復興知見班 専門調査官)を交え、登壇者とトークセッションが行われました。
吉澤さんは「ハンズオン支援」について、専門家の力を借りて伴走してもらうのは贅沢なことであり、社会の色々な部分で応用できるので、団体側に「ハンズオン支援」の価値を伝えたい、とのことでした。
樋口からは「民間、NPO、行政が、お互いの特徴を活かして補完しあうことで、意義ある有効的な活動になり、確実に自治体の維持発展につながると感じている。被災地で見られた自治体の連携や地域づくりは、全国各地の地域課題にも活かせるはずなので今学んでいる幅広い知見やノウハウを習得・活用していきたい」とのコメントがありました。
登壇者と参加者との交流タイム
登壇者と参加者との交流タイムでは、参加者から「熱い発言が多かった」「学ぶことが沢山あった」「吉澤さんと佐藤さんの距離感、信頼関係が良い」等の感想が寄せられ、盛況のうちに会が終了となりました。
参考資料
- 吉澤 武彦氏(一般社団法人日本カーシェアリング協会 代表理事)の資料はこちら
- 佐藤 善太氏(株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門シニアマネジャー)の資料はこちら
会議概要
- 日時:2022年3月16日(水)19:30-21:30
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:17名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社