東北暮らし発見塾(東松島校) ~東松島市に暮らす~ イベントレポート
Fw:東北FanMeetingでは、東北への移住をテーマに「東北暮らし発見塾」を開講しました。第1回は「東松島校」として、東松島市や宮城県の沿岸部への移住に関心のある方を対象に、市長や移住者の話が聞けるオンラインイベントを開催しました。
本イベントでは、渥美巖市長が地域の魅力をみなさんに向けて直接語りかけるほか、移住者たちの実体験に基づく生の声などを聞きだしながら、参加者のみなさん同士とも語り合える場となりました。移住者には、東松島市へ移住したのち、移住支援者としても活動を行っている宮城東松島移住・定住コーディネーターの関口雅代さんと、東松島市で美馬森八丸牧場を開設した八丸健さん・由紀子さんが登壇しました。
また、「社会や環境がよくなって、そしておもしろい」をテーマとした未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」との連動企画として、同誌の指出編集長を迎え、東松島市への移住をリアルに掘り下げました。
インプットトーク
(1) 渥美市長による地域の魅力・取り組み紹介 渥美 巖 氏(東松島市長)
東松島市長の渥美巖氏から地域の魅力と取り組みを紹介いただきました。東松島市は仙台から約40分、隣は石巻市、西には日本三景で有名な松島町があり、ブルーインパルスが飛び交う広い空と自然豊かで環境が良い町だそうです。
移住について、東松島市では「地域おこし協力隊」の定住率が93%と高い数字を残しています。東松島市の特徴として「働く場所がしっかりあること」と「福祉教育に暖かい政策」を挙げられました。東松島市はICT環境の整備、延長保育可能な保育園の誘致、市内の小学校全てに学童保育の設置、高校卒業までの医療費無料化を実施しています。人口減少対策として「働きやすさと子育てのしやすさを両立させること」が大切、とのことでした。
また、東松島市は平成30年6月に東日本大震災の被災3県で唯一SDGs未来都市に選定されています。「SDGs東北サミット」や年に一回市民全員を対象にした勉強会を行い、市民の認知度が高まっている、と述べてくださいました。
(2) 渥美市長と指出氏との対談 指出 一正 氏(ソトコト編集長)
指出氏によると、東松島は移住を考える上でバランスの良いまちだと感じているそうです。石巻市と仙台市の間にあり、どちらのメリットも享受しながら森と水辺もある、人と色々な生き物が生きやすいまち、とのコメントをいただきました。水辺や緑の豊かさの上に経済、社会、教育、福祉が成り立っていることがSDGsの大事な視点だそうです。人々が生きていくうえでの大事さが考えられている市政だと述べておられました。
渥美市長は「東日本大震災後、全国、世界、国や県の手厚い財政支援と市民の皆さんの協力で早い復興ができている」とコメントされました。またC. W. ニコルさんのアドバイスを受けて被災した学校を全て木造で作り直したように、今ある自然を大事に残しながら時代に合わせて市街地を形成していくこと、従来の農業漁業だけでなく、それ以外の働く場所をしっかりつくることが移住定住につながる、と考えているそうです。
指出氏は、多様な働き方を担保できる仕組みづくりは移住する人の安心の要になると指摘されました。仕事の選択肢を狭めない町に人々は注目している、東松島はインフラだけではなくマインドも形作られていて「この場所がいいな」という気持ちが持続する雰囲気作りをされている印象がある、と述べられました。
渥美市長は「人との関係が一番」だと語ります。将来像として地方創世とSDGsの理念を踏まえ、「住み続けられ持続・発展する東松島市-地方創生のトップランナー」を目指していく、と語ってくださいました。
この後、参加者同士で自由に語り合うブレイクアウト・セッションが設けられました。
移住経験・支援者の経験談
(1)関口 雅代 氏(宮城東松島移住・定住コーディネーター)
東京出身の関口氏は音楽業界でデザイナーとして活躍されていましたが、東日本大震災のボランティアをきっかけに東北に関わりを持ちます。「東北食べる通信」の設立に関わりイベントコーディネーターを3年間務めました。食べる通信を通して東松島とのご縁が出来、人々に触れ、その市民性に惚れ込んで移住したそうです。デザイナーとして地域おこし協力隊に誘われ、退任後「移住定住コーディネーター」にスカウトされて現在に至る、とのことでした。
東松島の特徴として、移住者同士のコミュニティが少なく、逆に移住者と地元の人たちとが垣根なく一緒に何かを作っていくことが多い町だと感じているそうです。
渥美市長も「外からの視点を大切にしているので、東京出身の関口さんにコーディネーターをお願いしている」とコメントしてくださいました。
(2)八丸 健 氏・由紀子 氏(美馬森 八丸牧場)
八丸健氏は移住キャリア9地域目、由紀子氏は移住キャリア4地域目のベテラン移住者です。2018年に岩手県盛岡市から東松島市に移転されました。東日本大震災をきっかけに、東北沿岸部の被災地の子ども活性支援事業を実施し、2011年から東松島復興に関わります。2013年に「馬と森の力を借りて」地域活性を目指す「美馬森プロジェクト」が東松島市の復興事業提案制度に採択され、以来活動を続けています。
馬は絆をつくり生き抜いてきた生き物だそうです。馬の行動様式を理解して関係を深めながら、心身の癒しや自信の向上を目指す「絆づくりのプログラム」を行われています。「今はモノの時代から心の時代に変わっていった、心のアプローチを大事にしていく」と想いを語られました。
トークセッション
ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者とのトークセッションが行われました。ウェルビーイングの視点から馬の特性が「心の復興」につながることについて、指出氏は「SDGsは人権にかかるテーマだと思っている、人が幸せに生きていくためにどうしたらいいか皆で考えることは大事なこと、八丸牧場は馬と人が良いコミュニケーションをとりながら『幸せをつくる』というあいまいな表現にされがちなものをしっかり具現化されている。」と、示唆されました。
八丸由紀子氏は「まず自分から馬や森に愛情をかけてお世話をすることで馬や森が愛や癒しを返してくれる。移住も同じで、こちらから与えることが大切、最初から欲しがるのではなく与える精神がキーワードだと思います。」とのことでした。
東松島の素晴らしさについてもさらに語られました。特産の牡蠣や海苔も、行政や市民の「ノリ」も良く、トライ&エラーができる土壌があることや、「スポーツ健康都市宣言」を制定するなどスポーツ健康の面からも地域活性化を推進していくそうです。
東松島は日常が心地よく、多くの窓口があるので、お試し移住からまず検討してほしい、とのことでした。
参考資料
会議概要
- 日時:2022年1月24日(月)19:30-21:30
- 形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
- 参加者数:41名
- 主催:復興庁
- 企画運営:エイチタス株式会社