Fw:東北 Fan Meeting Vol.3 「地域で語り継ぐ災害伝承の仕掛けづくり~東日本大震災と雲仙普賢岳噴火から考える」

「地域で語り継ぐ災害伝承の仕掛けづくり~東日本大震災と雲仙普賢岳噴火から考える」イベントレポート


 東日本大震災では震災10年経ったいま、各地で地域での災害伝承に向けた取り組みが継続的に行われています。歴史上、多くの災害に見舞われたわが国は、その時代ごとに、人々の記憶と記録を次世代へ残そうと、工夫や努力が重ねられてきました。
 今回のFw:東北FanMeetingでは、東日本大震災での災害伝承の活動と、被災から30年を迎えた雲仙普賢岳の噴火災害での伝承の活動を取り上げ、いまの時代から次世代に何を、どう残していくのかを、みなさんと考える場としました。
 ゲストには、福島県いわき市で「原子力災害考証館 furusato」の開館をはじめ、震災被害を伝える活動を展開する地元老舗温泉旅館、古滝屋16代目の里見喜生さんをお迎えしました。地域の観光業を担う里見さんが、東日本大震災での災害伝承に歩みを進めたきっかけや想いはどのようなものなのでしょうか。他地域からは、長崎県雲仙市で、島原半島ジオパークガイドとして活動している吉岡誠一さんをお迎えし、雲仙普賢岳噴火の伝承活動についてお話を伺い、発災から30年を経た現在の取り組みをご紹介いただきました。
 お二人の活動から考えられる災害伝承の工夫と、この先の継続に向けた共通の課題や可能性はどんなところにあるのか。そして、この先の伝承をいかに次世代につないでいくことができるのか。参加者のみなさんと一緒に掘り下げました。
 3Dデータの活用やデジタル人材と呼ばれる人たちとの協働は、この10年でどのように進化し、今後はどのような動きが求められるのでしょうか。

里見喜生氏 (古滝屋 16代目当主)


 里見さんは、東日本大震災、水害、コロナなどの様々な災害を見てきて「モノや肩書を持っていた人ほど、振り幅が大きく精神的ダメージが大きい」と感じているそうです。これからは「共感力」や「生き抜く力」が大事だと語ってくださいました。
 ボランティア活動を行う時に、地元の人と一緒に課題を考えて「共感力」が高まり、その地域に関心が生まれて故郷と呼べる場所になることや、五感が磨かれて「生き抜く力」を得られることを実感しているそうです。
 何が起きるかわからない時代だからこそ、頼れる人や場所をつくっておくこと、大切な人を守ることために体力と精神力を身につけておくこと、消費だけの生き方から自給自足の練習をしておくこと、の大切さを挙げられました。
 自身の旅館の中にオープンした「原子力災害考証館 furusato」を通して原子力災害に関心を持つきっかけになっていただければ良い、と想いを述べておられました。

吉岡誠一氏(島原半島ジオパークガイド)


 吉岡さんは、島原半島の自然がどのようにできたか、暮らしや産品を生み出すとともに災害の元凶ともなる噴火とどう向き合うか、などについて説明してくださいました。
 ジオパーク活動の目的は「地域が一丸となって、無理なく地域社会を維持し地域資源を未来に引き継ぐこと」だそうです。
 雲仙火山の噴火間隔は人間の寿命よりも長いので「次世代に伝える」ことが次の噴火の備えになることを指摘されました。
 「自然災害を乗り越えていく上で大切なこと」として、普段からみんなと仲良くすること、人を認め助け合う気持ちを持つこと、地域で訓練しておくことを挙げられました。地域全体が一致団結しないと非常事態を乗り越えることはできない、とコメントしてくださいました。
 自分たちの地域の課題である少子高齢化や雇用減少による経済活動の衰退により「地域社会が維持できなくなること」の解決策として「ジオパーク」が役立てれば良い、とのことでした。

トークセッション


 ファシリテーターの原亮(エイチタス株式会社)を交え、登壇者とのトークセッションが行われました。
 「災害伝承を地域外の若い世代にどのように伝えていくか」というテーマでは、デジタルアーカイブやオンライン学習を用いることや、自然は災害だけではなく恵みも与えていることを文脈で伝えていくことの大切さが示唆されました。
 また「災害伝承していくことの難しさ」として、被災家屋や被災校舎は追体験のためには重要だが、将来の維持管理が課題であることなども話されました。

登壇者と参加者の交流タイム

  登壇者と参加者の交流タイムでは、参加者から 「火山との共生について興味深かった」「価値のある話だった」「とても心打たれたので努力していきたい」などの感想もきかれ、盛況のうちに終了となりました。

参考資料


会議概要

  •  日時:2021年12月2日(木)19:30-21:30
  •  形式:Zoomミーティングによるオンライン会議
  •  参加者数:50名
  •  主催:復興庁
  •  企画運営:エイチタス株式会社